内発的動機付けとは?外発的動機づけとの違いと高め方

内発的動機付けとは?外発的動機づけとの違いと高め方
目次

部下のやる気が続かない。評価や報酬で動かそうとしても、効果は一時的ですぐに元に戻る。多くの管理職がこの壁にぶつかります。

その原因を本人のやる気の問題で片付けると、打ち手を見誤ります。やる気が続くかどうかは、動機の種類によって決まるからです。

カギになるのが内発的動機付けです。報酬で釣る外発的動機づけとは性質が異なり、本人の内側から行動を支えます。

ただし、内発的動機付けは与えるものではありません。引き出す設計の問題です。

本記事では、定義と外発的動機づけとの違い、提唱者デシの理論、部下の主体性を高める方法までを、300社以上の組織を支援してきた知見をもとに解説します。

内発的動機付けとは何か

内発的動機付けとは、報酬や強制ではなく、本人の興味や関心、面白さといった内側の感情から生まれる動機のことです。

外から与えられる動機づけとは源泉が異なり、行動そのものが目的になります。まずは定義と理論的な背景を整理します。

内発的動機付けの意味

内発的動機付けとは、活動それ自体への興味や面白さから行動が生まれる状態を指します。報酬がもらえるからではなく、やること自体が楽しい、もっと知りたいという感情が原動力になります。

たとえば、新しい技術を誰に言われるでもなく調べ続けるエンジニアがいます。報酬のためではなく、わかること自体に手応えを感じているからです。これが内発的に動機づけられた状態です。

仕事の文脈では、この状態にある人材は粘り強く、質の高いアウトプットを出します。指示がなくても自分で課題を見つけ、改善を重ねるからです。だからこそ、組織のマネジメントにおいて重要なテーマになります。

外発的動機付けとの違い

外発的動機付けとは、報酬や評価、罰、他者からの強制など、外側の要因によって生まれる動機のことです。給与やボーナス、昇進、上司からの叱責などがこれにあたります。

内発的動機付けとの最大の違いは、動機の源泉が自分の内側にあるか、外側にあるかという点です。

両者は効き方も異なります。外発的動機づけは即効性が高く、行動をすぐに引き出せます。一方で、報酬や罰がなくなると行動も止まりやすいという弱さがあります。

内発的動機付けは立ち上がりに時間がかかります。ただ、いったん生まれると外的な条件に左右されにくく、長く持続します。どちらが優れているかではなく、性質の違いを理解して使い分けることが重要です。

観点

内発的動機付け

外発的動機づけ

動機の源泉

内側の興味や関心、面白さ

外側の報酬や評価、罰

即効性

低い(時間がかかる)

高い(すぐ動く)

持続性

高い(条件に左右されにくい)

低い(報酬がなくなると止まる)

向いている業務

創造的で正解のない業務

単純で定型的な業務

提唱者デシと自己決定理論

内発的動機付けの研究を体系化したのが、心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンです。

2人が提唱した自己決定理論は、人がどのような条件で内発的に動機づけられるかを説明する代表的な枠組みになっています。

デシは1971年の実験で、ある作業に金銭報酬を与えた群と与えなかった群を比較しました。報酬を与えられた群は、報酬がなくなると作業への意欲を下げました。

報酬で釣ると、かえって内発的動機が損なわれることを示した実験です。

この知見は、マネジメントに重い示唆を与えます。やる気を引き出そうと報酬を積み増す施策が、長期的には逆効果になりうるからです。動機づけを設計するうえで、避けて通れない理論だと考えています。

内発的動機付けを支える3つの心理的欲求

自己決定理論では、内発的動機付けは3つの心理的欲求が満たされたときに生まれるとされます。何を満たせば人は内側から動き出すのか、自律性、有能感、関係性の順に整理します。

  • 自律性:自分で行動を選んでいるという感覚
  • 有能感:できる、成長しているという手応え
  • 関係性:周囲とつながり、認められているという実感

自律性:自分で選んでいる感覚

自律性とは、自分の行動を自分で選んでいるという感覚のことです。やらされているのではなく、自分で決めて取り組んでいる。この実感が、内発的動機付けの土台になります。

逆に、すべてを細かく指示され、選ぶ余地がない状態では、内発的動機は育ちません。同じ業務でも、手順まで指定されるのと、目的だけ共有されて進め方を任されるのとでは、本人の意欲がまるで変わります。

ただし、自律性は放任とは違います。判断材料も経験もない相手に丸投げすれば、本人は迷うだけです。選べる範囲を相手の習熟度に合わせて設計することが、自律性を機能させる条件になります。

有能感:できるという手応え

有能感とは、自分はこれができる、成長しているという手応えのことです。検索される機会の多い有用感もほぼ同じ意味で、自分が役に立っているという実感を指します。

人は、できることが増える過程に面白さを感じます。少し背伸びした課題を乗り越え、できなかったことができるようになる。この成功体験の積み重ねが、有能感を育てます。

注意したいのは、本人が手応えを得るには、何ができるようになったのかを具体的に認識できる必要がある点です。

漠然と褒めるだけでは有能感は育ちません。どの行動がよかったのかを言葉にして返すことが、有能感を支えます。

関係性:つながりの実感

関係性とは、周囲とつながっている、認められているという実感のことです。自分の仕事が誰かの役に立ち、チームの一員として受け入れられている。この感覚が、内発的動機付けを下支えします。

人は、孤立した状態では意欲を保ちにくい生き物です。どれだけ自律性と有能感があっても、自分の仕事が誰のためになっているのか見えなければ、動機は痩せていきます。

仕事の意味や全体への貢献を共有することが、関係性を満たすうえで効きます。自分の担当業務が事業のどこにつながっているのかが見えると、目の前の仕事の手触りが変わります。

内発的動機付けがマネジメントで重要な理由

内発的動機付けは、心理学の概念にとどまりません。事業成長の観点から見ても、組織のパフォーマンスを左右します。なぜマネジメントで重要なのか、3つの理由から整理します。

指示待ちが減り主体的に動くようになる

内発的に動機づけられた人材は、指示を待ちません。自分で課題を見つけ、改善の手を打ちます。マネージャーが逐一指示を出さなくても現場が回るため、組織全体のスピードが上がります。

指示待ちが多い組織では、マネージャーがボトルネックになります。判断がすべて上に集まり、現場は承認を待つ時間が増えるからです。これは事業の成長スピードを直接押し下げます。

主体性は、性格ではなく動機の状態から生まれます。指示待ち組織から抜け出す方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。

これは自走する組織の作り方の記事です。

成果の質と創造性が上がる

単純な作業であれば、報酬による外発的動機づけでも成果は出ます。一方で、答えのない課題や創造性が求められる業務では、外発的動機づけはむしろ機能しにくくなります。

報酬で釣られた状態では、人は最短で報酬に届く方法を選びます。決められた範囲をこなすことには向きますが、前例のない問いに粘り強く向き合う動機にはなりにくいからです。

複雑で正解のない仕事ほど、内発的動機付けが成果の質を左右します。新規事業や企画のように、創造性が問われる領域でこの差は大きく表れます。

離職を防ぎ定着とエンゲージメントにつながる

報酬や待遇だけでつなぎとめた人材は、より良い条件を提示されると離れていきます。条件で動いている以上、当然の帰結です。エンゲージメントの土台がもろいと、定着は安定しません。

内発的動機付けが効いている人材は、仕事そのものに価値を感じています。給与だけでは説明できない理由でその仕事を選んでいるため、つなぎとめの強度が違います。

若手の離職に悩む組織ほど、報酬や福利厚生の改善に目が向きがちです。ただ、仕事の面白さや成長実感という内発的な動機が抜け落ちていると、待遇改善だけでは定着につながりません。

若手の離職の根本原因については、以下のなぜ若手の離職は止まらないのかで詳しく解説しています。

部下の内発的動機付けを高める方法

ここからは、部下の内発的動機付けを高める具体的な方法を整理します。3つの心理的欲求を満たす行動に落とし込むことがポイントです。観測できる行動レベルまで具体化して解説します。

選択肢を渡して自分で決めさせる

自律性を高める最も実践的な方法は、判断の余地を意図的に渡すことです。目的とゴールは明確に共有したうえで、進め方や手段は本人に選ばせます。

たとえば資料作成を指示する代わりに、この商談で受注率を上げたいが何が要ると思うか、と問いかける。本人に考えさせ、出てきた案を一緒に磨く。この一手間が、やらされ感を当事者意識に変えます。

渡す裁量の幅は、相手の習熟度で調整します。経験の浅い相手にはゴールと制約を細かく示し、選択肢を絞る。経験を積んだ相手には範囲を広げる。自分で決めた実感を、本人の段階に合わせて作ることが重要です。

結果でなく具体的な行動を承認する

有能感を高めるには、成果を承認するだけでは足りません。何をしたから成果につながったのかを、具体的な行動に紐づけて言語化することが効きます。

よくやったで終わらせず、最後まで諦めずに顧客に食らいついた粘りが受注につながった、と返す。再現できる行動として承認すると、本人は次も同じ行動を取れます。これが成功体験を有能感に変える方法です。

ここで頑張った、意識が高いといった抽象的な評価は避けます。本人が再現できないからです。誰が見てもわかる行動レベルまで具体化することが、承認を機能させる条件になります。

承認やフィードバックの具体的なやり方は、以下のフィードバックが難しいと感じるあなたへで解説しています。

仕事の意味と貢献を言葉にして共有する

関係性を高めるには、目の前の業務が事業のどこにつながっているのかを、言葉にして共有することが効きます。作業の意味が見えると、同じ業務でも手触りが変わります。

この入力をお願い、ではなく、この数字が翌月の在庫判断の土台になり、ここが狂うと現場が混乱する、と伝える。自分の仕事が誰の役に立つのかが見えると、業務への向き合い方が変わります。

意味づけは、一度伝えて終わりにはなりません。事業のフェーズが変われば、同じ業務の意味も変わるからです。定期的に文脈を更新して伝え直すことが、関係性を保つうえで欠かせません。

評価・報酬を動機づけの主役にしない

ここまでの3つを支えるのが、報酬の扱い方です。報酬や評価を動機づけの主役に据えると、デシの実験が示した通り、内発的動機を押し下げる恐れがあります。

報酬は、不公平感をなくすための土台として整えるものだと捉えています。低すぎる給与は不満の原因になりますが、報酬を上げ続けても内発的動機は生まれません。

報酬で動機を買おうとした瞬間に、仕事は報酬を得る手段に変わってしまいます

報酬は衛生要因として適切に整え、動機づけの主役は自律性、有能感、関係性に置く。この役割分担が、持続する動機を設計するうえでの基本です。

部下のやる気が続かない原因の多くは、本人ではなく動機づけの設計にあります。

エンゲージメント改善の実践チェックシートでは、サーベイスコアが伸びない原因を管理職の日常行動の切り口で分析し、10項目で自社の現状を診断できます。

内発的動機付けで陥りやすい3つの失敗

内発的動機付けは、施策として取り組むほど逆効果になりやすいテーマです。よかれと思った働きかけが、かえって動機を削ぐことがあります。現場で頻発する3つの失敗を取り上げます。

「やる気を出させよう」と外から働きかける

最もよくある失敗が、やる気そのものを直接引き上げようとする働きかけです。モチベーションを上げる施策やイベントを次々に投入する。ただ、動機は外から注入できるものではありません。

動機は、行動の結果として後から生まれるものだと捉えています。意欲が湧くのを待ってから動くのではなく、まず小さく動いて成功体験を得る。その手応えが、次の意欲をつくります。順序が逆なのです。

会社に不満はないがやる気が出ない、という部下に優しく寄り添うほど、かえって本人は目の前の仕事から目をそらします。

こうしたケースでは、まず目の前の壁に集中させ、乗り越えた瞬間に具体的な行動を承認するほうが効きます。

「主体性を持て」と精神論で迫る

主体性を持て、当事者意識を持て、という言葉だけの要求も、典型的な失敗です。言われた側は何をどうすればよいかわからず、無力感だけが残ります。

主体性は、抽象的な掛け声では育ちません。観測できる行動に翻訳して初めて、相手は動けるようになります。

主体的にではなく、気づいたことは翌朝までに1行でいいから共有してほしい、と具体化する。ここまで分解して、ようやく行動が変わります。

精神論で迫るマネジメントは、本人の問題に見せかけて、実は設計の放棄です。どんな行動を取ってほしいのかを、誰が見てもわかる粒度まで落とし込むことが、主体性を引き出す出発点になります。

主体性がない部下への向き合い方は、以下の記事で原因から具体的な育成術まで解説しています。


主体性がない部下の育て方|問題は「やる気」じゃない!?主体性がない部下の原因と育成術

主体性がない部下にお悩みですか?その原因は「やる気」ではなく、組織の仕組みにあるかもしれません。本記事では、部下の主体性を引き出し、自律型人材を育てるための具体的なマネジメント術と組織づくりを、ベンチャー経営の視点から解説します。

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施策を入れただけで定着させない

1on1やサーベイ、表彰制度といった施策を導入しただけで満足してしまうのも、よくある失敗です。制度は動機づけの器にすぎず、運用が伴わなければ形だけが残ります。

たとえば1on1を入れても、それが進捗確認の場になれば、部下は本音を話さなくなります。器を入れたことと、動機が高まることはまったく別の話です。導入をゴールにした瞬間に、施策は形骸化します。

研修や制度で行動変容を起こすには、現場で実践し、振り返り、改善する仕組みまで設計する必要があります。施策の導入は出発点であって、定着までを設計して初めて意味を持ちます。

研修を成果につなげる仕組みづくりは、研修で行動変容を促すにはで詳しく解説しています。

内発的動機付けに関するよくある質問

内発的動機付けと外発的動機付けはどちらが効果的ですか

仕事の性質によります。単純で定型的な業務は外発的動機づけが向き、創造性や粘りが要る業務は内発的動機付けが効きます。両方を使い分けるのが現実的です。

内発的動機付けの身近な具体例を教えてください

報酬がなくても続けてしまう行動が該当します。仕事では、面白くて自主的に学ぶ、改善案を自分から出すなどです。趣味の読書やスポーツも内発的動機付けの例です。

アンダーマイニング効果とは何ですか

内発的に取り組んでいた行動に金銭などの報酬を与えると、かえって意欲が下がる現象です。デシの実験で示されました。報酬目当てに目的がすり替わることが原因です。

エンハンシング効果とは何ですか

言葉による承認や肯定的なフィードバックが、内発的動機付けを高める現象です。金銭報酬とは逆の働きで、具体的な行動を認める言葉が有能感を支え、意欲を引き上げます。

ダニエル・ピンクのモチベーション3.0とは何ですか

作家ダニエル・ピンクが著書で示した考え方です。自律性、熟達、目的の3つが現代の動機づけの核心だとし、報酬と罰だけでは人は動かないと指摘しています。自己決定理論とも重なります。

外発的動機づけは完全に不要なのですか

不要ではありません。報酬や評価は、不公平感をなくす土台として必要です。ただ動機づけの主役に据えると逆効果になるため、衛生要因として整える役割に留めるのが適切です。

内発的動機付けが低い部下にはどう接すればよいですか

やる気を待つより、小さく動かすのが先です。達成できる目標に集中させ、乗り越えたら具体的な行動を承認する。行動から手応えを作ることが、内発的動機付けの回復につながります。

まとめ:内発的動機付けは引き出す設計の問題

内発的動機付けとは、報酬ではなく本人の内側から生まれる動機であり、自律性、有能感、関係性の3つが満たされたときに育ちます。

外発的動機づけと役割を分け、報酬は土台として整え、動機づけの主役はこの3つに置くことが基本です。

注意すべきは、内発的動機付けは与えるものではないという点です。やる気を直接引き上げようとするほど逆効果になります。

まず小さく行動させ、観測できる行動を具体的に承認する。動機は行動の結果として後からついてきます

マネディクは、こうした動機づけを精神論ではなく、観測可能な行動として設計し、現場に定着させる支援を行っています。

部下のやる気が続かない、施策を入れても変わらないと感じている組織は、動機づけの設計そのものを見直す時期かもしれません。

ここまで解説した通り、部下の主体性を引き出す鍵は、動機づけの設計にあります。自社のエンゲージメントを高める具体的な進め方は、以下のチェックシートで確認できます。

エンゲージメント改善 実践チェックシート

川﨑 俊介
記事を書いた人
川﨑 俊介

新卒で当時6期目(60~70名規模)の株式会社ジーニーへ入社。入社後3年間でリーダー、マネ―ジャー、部長とマネジメント経験を積み、入社後4年目で事業責任者兼執行役員に就任。組織も300名を超え、グロース上場を経験。 その後海外事業など含む複数事業の責任者、常務執行役員を経て、2022年に取締役に就任。経営企画や人事などコーポレート領域も管掌。組織規模としても1000名を突破。 2024年4月に独立し、個人で人事・経営コンサル業も成長企業に対して実施しつつ、同年12月にマネディク株式会社CEO/アクシス株式会社取締役COOにも就任。

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