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マネージャー育成の完全ガイド|失敗しない4つのステップをプロが解説

マネージャー育成の完全ガイド|失敗しない4つのステップをプロが解説
目次

マネージャー育成とは?その定義と見逃してはいけない危険な兆候

マネージャー育成とは、組織の成果を最大化するために、マネジメントとしての能力を体系的に向上させるプロセスを指します。

「マネージャーが業務に追われて部下育成の時間がない」
「マネージャーのスキル不足でチームのパフォーマンスが伸びない」
「優秀な社員から辞めていく」
「組織の士気が低下し、マネジメント不全が蔓延している」

もしあなたの組織にこのような兆候が複数見られる場合、それはすでにマネージャー育成不全が迫っている明確なサインです。

マネージャー育成の遅れは突如起きるものではなく、気づかぬうちに発生するため、気付いた時にはもう手遅れといったことが多いです。しかし、マネージャー育成には明確な答えがあります。

本記事では、マネージャー育成を成功させるための実践的な4ステップと、失敗を繰り返さないための重要原則を解説していきます。

以下の資料で、業績成長をしていくうえでマネージャーに必要なスキル、そしてそんなマネージャーの育成法を実践的な内容で解説しているので、マネージャー育成に課題を感じている経営者の方はぜひダウンロードしてご活用ください。


マネージャー育成不全の4つの段階と放置の危険性

マネージャー育成不全は一気に起こるものではなく、4つの段階を経て進行します。あなたの組織が今どの段階にあるかを正確に把握することが、マネージャー育成戦略を立てる上での最初の診断となります。

1. 潜在的な不満の蓄積(潜伏期)

潜伏期では、目に見える業績の低下はないものの、マネージャーの育成が後回しになり、組織内に漠然とした不安感が漂い始めています

マネージャーは日々の業務やプレイングに追われ、部下育成やマネジメントの学習に時間を割けません。現場レベルでは「マネージャーが忙しすぎて相談できない」「育成の機会がない」といった潜在的な不満や不信の種が静かに広がり始めている状態です。

この段階で放置すると、マネージャーのスキル不足が顕在化し、次の段階への移行が加速する危険性があります。

2. スキル不足の顕在化と停滞(停滞期)

停滞期では、マネージャーのスキル不足が顕在化し、チームのパフォーマンスが停滞し始めます

マネージャーは部下の課題を解決できず、適切なフィードバックもできません。実際に、「社長とかマネジメントの能力が、その対象組織の能力の上限」とはよく言われることです。組織は柔軟性を無くし、硬直化していきます。

この段階で放置すると、組織の成長が停止し、優秀な人材の離職が始まる危険性があります。

3. 優秀な人材の離脱と疲弊(疲弊期)

疲弊期に入ると、マネージャーのスキル不足に見切りをつけた優秀な人材が退職し始め、それに伴って退職ラッシュが続いてしまう可能性が高まります

ある経営者は、「自分もマネジメント強化をしなかったことで、じわじわと各所で起こっていた課題を察知できず、一気に業績悪化と同時に大量離職が発生した苦い経験がある」と語っています。

この段階で放置すると、組織のノウハウが失われ、事業の継続性に重大な影響を及ぼす危険性があります。

4. 組織全体のマネジメント不全(崩壊期)

崩壊期では、マネージャー育成不全が組織全体に波及し、マネジメント機能が完全に停止します

全社員が「マネージャーに期待しても無駄」という空気になり、トップマネジメントに対する信頼が完全に失われた状態です。プロジェクトは遅延が常態化し、新規事業は失敗し、競争力を完全に失います。

マネージャー育成を成功させる4つのステップ

マネージャー育成の重要性を認識したら、次に行うべきは具体的な行動です。育成は闇雲に進めても成功しません。トップマネジメントが先頭に立ち、以下の4つのステップを順序立てて実行する必要があります。

ステップ1:マネージャーの現状スキルを客観的に把握する

感情論や憶測ではなく、客観的な事実に基づきマネージャーの現状スキルを把握することから始めましょう。マネージャー育成の現場では、正確な情報ほど共有されにくいものです。

最初の行動で誤った診断を下すと、その間にも刻一刻と組織の状態は悪化していくため、以下のような手段でマネージャーの現状スキルを客観的に把握することが重要です。

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マネージャースキルのチェック

  • 業績影響度の分析: 
    • 研修などのROIを測るには、「業績に影響を与える行動パターン(=組織がどんなアクションをしていれば、業績成長につながるのか)」を明確に定義し、その行動をする人員をどれだけ社内に増やせるか?という形で評価する必要があります。
    • 例えば、成果を出している幹部やキーマンの行動パターンを列挙し、それらの行動をより多くのマネージャーがしてくれたら業績は伸びるはずです。
  • 現場ヒアリングと管理職面談: 
    • 現場のヒアリングや現在の管理職との面談などから課題を抽出し、解決に役立つ研修内容を選びます。マネージャー自身が認識している課題だけでなく、部下からのフィードバックも収集することが重要です。
  • 360度評価の実施: 
    • マネージャーの強みと弱みを多面的に評価し、育成の焦点を明確にします。少しでも解釈の余地のあるフィードバックだと、「いや、それは僕のせいじゃない」という他責の余地を残してしまい、結局何も残りません。

ステップ2:マネージャーに求める役割と能力を明確に定義する

マネージャーの「現状」を把握したら、次に行うべきは「どのようなマネージャーを目指すのか」という役割と能力を明らかにすることです。多くの組織では、マネージャーに求める役割が曖昧なまま育成を進めています。

社員が再び同じ方向を向いて歩き出すためには、明確な「マネージャー像」が不可欠です。

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マネージャー像定義の方法

  • 結果を出すことに執着する:
    • マネジメントとしての「成功」とは、そのチームや組織が「結果を出していること」に尽きます。逆にこれらの結果が伴っていなければ、いくらエンゲージメントの高いメンバーたちが互いに切磋琢磨し合いながら良い雰囲気の中で育っていっていても、そのマネジメントは「不合格」です。
  • センスメイキング(納得感の醸成)を実践する:
    • グロービスでは「センスメイキング理論」と呼ばれる考え方があり、組織を動かすのは客観的な「正解」ではなく、主観的な「納得感(腹落ち)」であるとされています。
    • 完成したビジョンをトップダウンで押し付けるのではなく、可能であれば策定段階からキーマンを巻き込みましょう。共にビジョンを創り上げるプロセスが当事者意識を生み出します。
  • 部下の成長に蓋をせず、自分を超えていく土台になる:
    • 部下を「庇護対象(=守るべき弱きもの)」として扱うのは、実は「部下の能力の上限を自分のレベルに留めておきたい」というマネージャーの無意識のエゴであることが多いです。
    • マネージャーの仕事は、自身がボトルネックにならず、高い期待をかけ続け自分を超えていくための土台になるべきです。

行動指針の作り方とは?成長企業の事例や浸透方法を解説

「従業員が30名、50名と増えるにつれ、創業時の価値観が薄れてきた」「部門間の連携がうまくいかず、昔は言わなくても伝わっていた意思疎通が機能しない」上記の悩みのように事業の急成長に伴う「組織の成長痛」は、価値観の希薄化や部門間の連携不足を引き起こし、成長を鈍化させる恐れがあります。この壁を乗り越える鍵が、組織の共通言語となる「行動指針」です。

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ステップ3:研修と実践の場を組み合わせて育成する

マネージャー像という羅針盤を手に入れたら、いよいよ具体的な育成の実行フェーズに移ります。ビジョンを絵に描いた餅で終わらせないため、研修と実践の場を組み合わせて育成していきましょう。

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研修と実践の組み合わせ方

  • 研修で体系的な知識をインプットする: 
    • リーダーシップ、部下育成、問題解決スキルなど、マネージャーに必要な核心的な内容を研修で学びます。研修後のフィードバックや振り返りのタイミングを含めて計画すると良いでしょう。
  • OJTトレーナーやメンターに任命して実践させる: 
    • OJTトレーナーやメンターといった「教える側」に任命することで、指導計画を立てたり相手の理解度を把握しながら説明するスキルを養えます。業務を行い実際に経験をすることはマネージャーを育成する上で最も効果的な方法です。
  • 成功企業の事例から学ぶ: 
    • サントリーグループは、部長層と課長層を対象に、変革型の経営層を育成するプログラムを実施し、「2022 Learning Elite」でブロンズを受賞しました。ヤフーやグリーは、新任役職者向けに「1on1ミーティング」を中心とした人財開発を進めています。

ステップ4:マネージャー育成を継続的に強化する仕組みをつくる

育成施策は、実行して終わりではありません。一過性のイベントで終わらせず、組織の「当たり前」=文化(カルチャー)として定着させていくプロセスが最も重要であり、最も忍耐力が必要です。

マネージャー育成は、「元の悪い状態への逆戻り」という大きな罠との瀬戸際に立っています。一度、マネージャー育成不全の危機感を感じているということは、一歩間違えば同様に再度崩壊への道を辿ることになってしまいます

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継続的な強化の仕組み

  • キーマンマネジメントを実践する: 
    • ヒト起点の「キーマン(=ポジション関係なく活躍できる優秀人材)」を社内で選定しておき、重要ポジションにアサインして最速で育成しておくと良いです。こうしてキーマンプールを充実させておけると、どんな状況でも耐えられる強い組織がつくれます。
  • 権限委譲における即時報連相を要求する: 
    • 権限委譲したい先の後任に対して、「あらゆることにおける即時報連相」を要求します。大事なのは、「手綱を握るのは後任本人である」という自覚を持たせ続けることです。
  • 1on1ミーティングを仕組み化する: 
    • 企業において1on1の目的はシンプルで、それは「メンバーの想定外の離職を防ぐこと」に尽きます。マネージャーがやるべきことは、メンバーの「いつもと違う」という僅かな変化のサインをキャッチすることです。

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なぜマネージャー育成が進まないのか?その根本原因

効果的なマネージャー育成と再発防止のためには、表面的な問題だけでなく、その根底にある「要因」を特定する必要があります。マネージャー育成不全は、多くの場合、以下の3つの原因が複雑に絡み合って発生します。

1. 緊急度が低いと誤認している

「マネジメントの強化はしたいが、一方で負荷もかけたくない」という企業には一定数出会います。聞けば、特に他に何かしら研修を受けていたり育成系の施策をやっているわけではなく、単純に「業績を伸ばしたり日々のマネジメントで忙しいから」という理由だったりします

ただ、断言します。マネジメントは、個人差はあれど「マネジメントの勉強」をしないと決して必要な水準を超えません。業績が悪化した際にどうふるまえば組織の士気を下げずに立て直せるのか、これらは先天的な素養だけで乗り越えられるほど甘い世界ではありません。

マネジメントの負荷が上がるからマネジメント育成ができないというより、「マネジメント育成に投資しないから、マネジメント負荷が高いままになり、それが組織全体に波及する」のです。

2. マネージャー自身がプレイングに逃げている

マネジメント業務とは、得てして抽象的で、遅効性で、精神的な負荷が高いものです。人の採用、評価へのフィードバック、組織文化の浸透、離職リスクへの対応、戦略の策定。これらはすぐに成果が見えず、正解もなく、時には部下から嫌われるリスクすらあります

一方で「プレイング(実務)」は、目の前のタスクをこなせば確実に「終わる」し、クライアントに貢献すればすぐに「感謝」されます。つまり、「プレイングマネージャー」という言葉を盾にして、不確実でストレスフルな「マネジメント」という本来の役割から目を背けているだけなのです。

3. 育成の効果が見えにくい

よくマネジメント研修とか何かしらの組織改善ワークショップなりの話をしていると、「ROIが分からないから導入判断しづらい」という声を聞きます

しかし、研修などのROIを測るには、「業績に影響を与える行動パターン(=組織がどんなアクションをしていれば、業績成長につながるのか)」を明確に定義し、その行動をする人員をどれだけ社内に増やせるか?という形で評価する必要があります。

よって、研修のROIはサービス業者側に委ねるものではなく、会社側が主体的に考えていくものです。研修のROIが分からないなら、それは組織課題がわかっていないということです。


ICEスコアリングモデルとは?優先順位付けの計算方法と使い方をフレームワークで解説

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マネージャー育成を成功に導くための重要原則

マネージャー育成を効果的に進めるためには、組織を再起動させるためのリーダーとして常に意識すべき重要な原則があります。

原則1:マネージャーは「結果」に執着する

マネジメントとしての「成功」とは、そのチームや組織が「結果を出していること」に尽きます。逆にこれらの結果が伴っていなければ、いくらエンゲージメントの高いメンバーたちが互いに切磋琢磨し合いながら良い雰囲気の中で育っていっていても、そのマネジメントは「不合格」です。

リーダーにとっての「成功」の定義は、「自分がどれだけ頑張ったか」や「チームが良い雰囲気か」ではなく、「組織として結果が出ているか」のただ一点に尽きます

原則2:部下力も並行して強化する

前提としてマネージャーはマネジメントをしないといけないが、経営視点で見たときに全ての課題をマネジメント課題にしてしまうと、ただでさえ若手で習熟度の低いマネージャーが多い企業においてはたくさんの「無理ゲー」が発生します

そんな時に、マネージャーの育成や強化は行っていきつつも、「マネージャーされる側」の強化も並行して行えると、マネジメント負荷も下がるし、組織課題も往々にしてそこに起因していることも多いので、有効です。これがまさに「部下力」です。

上からも下からも組織力を並行して強化していくことが、マネジメント強化の鍵です。

原則3:継続的な学習と実践の場を提供する

基本的には「課題」起点でインプットをすることが肝要です。今自分に求められている成果を出すうえで、何が不足しているのか?その不足要素を補完するうえではどんな知識や知見が必要なのか?

また、「他人の失敗から学べよ。自分自身の失敗だけで全てを学ぶには、人生は短すぎる」という言葉があります。失敗や壁にぶつかって人は成長していくが、自分自身ですべての失敗をするには時間が足りません。

だからこそ「失敗のベンチマーク」を見つけて、それを繰り返さないことを最低ラインとして仮説検証をしていくと良いです。自分自身の経験や認知から得られる学びだけでなく、「外省」も積極的に取り入れていくと、より早くゴールにたどり着けます。

本記事のまとめ

マネージャー育成は、決して平坦な道のりではありません。特に、育成不全の組織では専門的な知識なしには改善が極めて困難です。

我々マネディクは、これまで300社以上の成長企業に対し、マネージャー育成や、マネジメント不全の解消を支援してきました。そのため、「企業がいかにしてマネージャー育成不全を起こすのか?」「どうすればマネージャー育成を成功させられるのか?」については深い知見・経験を有しています。

以下の資料で、業績成長をしていくうえでマネージャーに必要なスキル、そしてそんなマネージャーの育成法を実践的な内容で解説しているので、マネージャー育成に課題を感じている経営者の方はぜひダウンロードしてご活用ください。


川﨑 俊介
記事を書いた人
川﨑 俊介

新卒で当時6期目(60~70名規模)の株式会社ジーニーへ入社。入社後3年間でリーダー、マネ―ジャー、部長とマネジメント経験を積み、入社後4年目で事業責任者兼執行役員に就任。組織も300名を超え、グロース上場を経験。 その後海外事業など含む複数事業の責任者、常務執行役員を経て、2022年に取締役に就任。経営企画や人事などコーポレート領域も管掌。組織規模としても1000名を突破。 2024年4月に独立し、個人で人事・経営コンサル業も成長企業に対して実施しつつ、同年12月にマネディク株式会社CEO/アクシス株式会社取締役COOにも就任。

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