従業員満足度(ES)とは|5つの要素と取り組み事例を解説

従業員満足度(ES)とは|5つの要素と取り組み事例を解説
目次

従業員満足度(ES)の定義・5つの構成要素・メリット・調査方法・取り組み事例を体系的に解説します。

300社以上の組織開発を支援してきたマネディクが、ES向上施策が形骸化する構造的な原因と、エンゲージメントまで接続する具体的な打ち手を紹介します。

従業員満足度(ES)とは

「ES向上が経営課題だ」と語られる場面は増えていますが、定義そのものが曖昧なまま議論される企業は少なくありません。

まずはESの意味と、混同されやすい顧客満足度・エンゲージメントとの関係を、事業成長の観点から整理します。

従業員満足度の定義と読み方

従業員満足度とは、自社の仕事内容・職場環境・処遇・人間関係などに対して、従業員がどの程度満足しているかを示す指標です。

英語ではEmployee Satisfaction、頭文字を取ってESと呼ばれます。1990年代以降に経営指標として広がり、現在は人的資本経営の文脈で再評価されています。

注意すべきは、ESは「不満が解消されている状態」を測る側面が強いという点です。給与水準や労働時間など、満たされていないと不満になりやすい要素が中心に置かれます。

ESは事業成長に直結する動機付け要因だけでなく、不満を防ぐ衛生要因の充足度を含む概念です。この性質を理解しないままスコアだけを追うと、施策は後述する形骸化に陥ります。

なぜいま従業員満足度が経営課題なのか

ESが改めて経営課題に据えられている背景には、労働人口の減少と、人的資本の開示要請の強まりがあります。

総務省統計局の労働力調査では、日本の労働力人口は2030年代にかけて長期的な減少局面に入る見通しです。

優秀な人材の取り合いが激化する中、ESは定着・採用・生産性に同時に影響する経営変数として扱われています。

加えて、2023年3月期から上場企業に対して人的資本に関する開示が義務化されました。離職率やエンゲージメントを投資家に説明する必要が生じ、ESや関連指標の可視化が経営課題に格上げされています。

ただしESは結果指標であり、これ単体を追いかけても事業は伸びません。ES向上を事業成長のための手段に位置づけ直す視点が、経営者には求められます。

顧客満足度・エンゲージメントとの違い

ES・顧客満足度(CS)・エンゲージメントは、似て非なる指標です。混同したまま議論を進めると、施策の優先順位が崩れます。

CSは商品やサービスに対する顧客の評価であり、ESはそのサービスを生み出す従業員側の満足度です。サービスプロフィットチェーンの研究では、ES向上がCS向上を経由して業績に波及することが示されています。

一方、エンゲージメントは「自社や仕事に対して自発的に貢献しようとする意欲」を指します。ESが「不満のなさ」に寄りやすいのに対し、エンゲージメントは前向きな関与を測る指標です。

事業合理上、ESだけを追うと不満は少ないが熱量も低い組織になりがちです。

マネディクが300社以上を支援してきた経験からも、ES向上の取り組みはエンゲージメント向上とセットで設計する方が、事業成果につながりやすいと言えます。

従業員満足度を構成する5つの要素

ES向上を経営課題として扱う以上、何を測れば自社のESを把握できるかを構造化しておく必要があります。

現場の打ち手に直結しやすい5つの要素に分解して解説します。

  • 要素1:仕事内容への納得感
  • 要素2:職場の人間関係
  • 要素3:上司のマネジメント
  • 要素4:評価・処遇への納得感
  • 要素5:経営理念・ビジョンへの共感

要素1:仕事内容への納得感

ESの土台になるのは、日々の仕事に対する納得感です。担当業務の意味、成長実感、貢献度の手応えが揃っているかが問われます。

ハーズバーグの二要因理論では、仕事内容そのものは動機付け要因に位置づけられ、充実すると満足度を押し上げる要素とされています。

給与や労働環境とは異なり、不足しても直接的な不満には結びつきにくい一方、充実すると組織全体の熱量が変わります。

得てして、納得感を高めるためにジョブ型雇用や役割の明確化が議論されますが、変化の激しい事業環境では役割の固定化はかえって機能不全を生みます。

マネディクの支援先でも、役割の余白を残しつつ業務の意味づけや成長機会の設計に投資する企業ほど、ESが安定する傾向があります。

要素2:職場の人間関係

職場の人間関係は、ESに対して短期的にも長期的にも大きく影響します。同僚や上司、他部署との関係性の質が、離職意向と直接結びつきやすい要素です。

内閣府の若者意識調査でも、若年層の離職理由として人間関係は上位に位置し続けています。コミュニケーションの量だけを増やしても、関係の質が伴わなければESには寄与しません。

マネディクの支援現場では、心理的安全性が誤って運用されているケースをよく見かけます。失敗を許容することと、責任を曖昧にすることは別物です。

創造性が求められる業務では心理的安全性を高め、定型業務では基準を厳しく保つという、業務特性ごとの使い分けが必要です。

仲が良い職場がESの高い職場とは限らない点を踏まえ、人間関係は事業成果を出すための関係性として設計する視点が、経営側には求められます。

要素3:上司のマネジメント

5つの要素の中で、ESに対して最も大きく作用するのが直属上司のマネジメントです。経営理念や評価制度がどれほど整っていても、現場で運用するのは上司だからです。

Gallup社のグローバル従業員エンゲージメント調査では、エンゲージメントスコアの差は上司に起因する変動で説明できる部分が大きいと指摘されています。

上司の関わり方が変われば、同じ制度でも従業員のESは大きく上下します。

特に重要なのは、上司による「観測可能な行動への翻訳」です。経営層が掲げる理念やバリューを、現場のメンバーが日々再現できる具体的な行動に翻訳する役割を担えるのは、間に立つマネージャー以外にいません。

このため、ES向上に本気で取り組む企業は、施策の起点をマネージャー育成に置きます。マネディクが300社の支援で繰り返し確認してきた事実です。

要素4:評価・処遇への納得感

評価・処遇への納得感は、ESに対して即効性のある要素です。報酬の絶対額より、説明が腹落ちするかが満足度を左右します。

成長フェーズの企業では、事業の変化に評価制度が追いつかないケースが頻発します。

半期の目標が3ヶ月で書き換わるような環境で当初目標通りの評価を機械的に当てはめると、貢献した人ほど不満を抱える結果になります。

マネディクの支援先では、評価制度をざっくり作り、運用で磨くアプローチを採用する企業が成果を出しています。

制度の細密さよりも、マネージャーが部下に評価結果を腹落ちさせる「センスメイキング」の力に投資する方が、ESには大きく効きます。

報酬の絶対水準は衛生要因として一定ラインを確保した上で、評価プロセスの説明可能性に経営の力点を置く設計が現実解です。

要素5:経営理念・ビジョンへの共感

5つの要素の最上位に位置するのが、経営理念・ビジョンへの共感です。仕事や評価への納得が積み上がっても、自社の方向性への共感がなければESは長期的に伸び悩みます。

経営学者ピーター・ドラッカーは「Culture eats strategy for breakfast」と述べ、企業文化が戦略を凌駕することを指摘しました。

経営理念やビジョンは、行動指針として現場に翻訳されてはじめて、ESや事業成果に作用します。

注意すべきは、理念の唱和や全社研修だけでは共感は生まれない点です。経営理念を行動様式に翻訳し、評価項目や日常のフィードバックに組み込む仕組みを持つ企業ほど、ESとエンゲージメントを両立できています。

理念を壁に貼る言葉で終わらせず、現場の判断基準まで落とすことが、5要素全体を底上げします。

従業員満足度を高める3つのメリット

ES向上を経営に提案する場面では、結局事業に何が返ってくるのかを言語化する必要があります。

生産性・人材定着・顧客満足の3点で、事業成長への寄与を整理します。

  • メリット1:生産性・業績の向上
  • メリット2:離職率の低下と人材定着
  • メリット3:顧客満足度と採用力の向上

生産性・業績の向上

ES向上による最大のメリットは、生産性と業績の向上です。意欲を持って働くメンバーが増えると、同じ人数・同じ時間で得られる成果が変わります。

Gallup社の「State of the Global Workplace」では、エンゲージメントの高い事業ユニットは収益性に有意な差が出ると報告されています。

ESはエンゲージメントの前提条件となる不満の除去を担うため、結果として収益指標にも波及していきます。

ただし、ESが高い組織が必ず高業績とは限りません。不満が少なく居心地が良いだけの状態に陥ると、業績にはむしろマイナスに作用することもあります。

ES向上は、事業目標へのコミットメントとセットで設計するときに、はじめて生産性に転化します。

離職率の低下と人材定着

ES向上の経営的インパクトとして無視できないのが、離職率の低下です。1人の離職に伴う採用と育成のコストは、年収の0.5〜1.5倍に達するという試算もあります。

労働政策研究・研修機構の調査でも、退職理由の上位には人間関係や評価への不満、キャリアの先行きが見えないことが並びます。これらはまさにESの構成要素そのものです。

マネディクが繰り返し提案しているのは、1on1を「びっくり退職の予防装置」として再設計することです。

育成や目標設定を詰め込むのではなく、定点観測の場として運用するだけで想定外の離職リスクは大きく下げられます。

人材定着は採用力にも波及します。離職率が下がれば採用枠が抑えられ、リファラル採用も増えるため、採用コストの構造的な低下が見込めます。

顧客満足度と採用力の向上

ES向上は、顧客満足度(CS)と採用力という対外的な指標にも効いてきます。社内のコンディションが、社外への提供価値に直接表れるためです。

サービスプロフィットチェーンの研究では、ES向上がサービス品質向上を経由してCSと収益に波及することが示されています。

とりわけBtoCサービスや法人営業のように、人が価値提供の主役になる事業では、ESとCSの相関は強く出ます。

採用面でも、ESが高い企業は口コミ評価が高まりやすく、リファラル経由の応募が増えます。マネディクの支援先でも、ESの改善とともに採用単価が下がった事例は珍しくありません。

ESを単なる人事指標と見なさず、CSや採用力に波及する事業の上流指標として位置づけ直すと、経営の議論に乗せやすくなります。

ここまで見てきた通り、ES向上のメリットは生産性・人材定着・顧客満足の事業指標に波及します。鍵を握るのは、ESを行動と業績に接続する研修設計です。

マネディクのエンゲージメント改善 実践チェックシートでは、現場で機能した打ち手とつまずきポイントを10項目で整理しています。自社の打ち手を組み立てる際の整理に活用できます。

従業員満足度施策が形骸化する3つの構造的原因

ES調査も施策も実施しているのに、現場の手応えが薄い。多くの企業が抱えるこの違和感には、構造的な原因があります。

マネディクが300社の支援で繰り返し見てきた3つのパターンを整理します。

  • 原因1:「満足」そのものを目的化してしまう
  • 原因2:調査結果が観測可能な行動に翻訳されていない
  • 原因3:マネージャーが現場の実装役になれていない

原因1:「満足」そのものを目的化してしまう

最も多い形骸化の入口が、ESスコアそのものを目的化してしまうパターンです。「来期はES80%」のような目標設定が独り歩きしはじめます。

満足度は不満の解消で押し上げやすい指標であり、衛生要因への投資でも数値は動きます。しかし、これらは事業成果には直結しません。

スコアを上げること自体が成功体験になると、経営から見て意味のない投資が続くことになります。

事業成長ドリブンで考えれば、追うべきはES単独ではなく「ES向上が生み出す行動変容」です。

マネディクの支援現場では、調査設計の段階で「このスコアが上がったら現場のどんな行動が増える想定か」をセットで定義することで、満足の目的化を防いでいます。

原因2:調査結果が観測可能な行動に翻訳されていない

2つ目の原因は、ES調査結果を「次に取るべき行動」に翻訳できていない点です。スコアレポートが配布されて終わるケースが、想像以上に多く存在します。

「上司との関係性」のスコアが低いと判明したとき、現場が取るべき行動は何か。「1on1の頻度を増やす」「フィードバックを丁寧にする」では抽象的すぎて再現できません。

「頑張る」「徹底する」のレベルで止まっている限り、組織は変わりません。

マネディクが提供しているスキルマップでは、形容詞や副詞の使用を禁止し、行動を観測可能な動詞レベルまで分解します。

「1on1の冒頭3分は雑談ではなく業務上の困りごと確認に充てる」のように、誰が見ても同じ動きが取れる粒度に落とすことが必要です。

調査結果を行動に翻訳する役割を担うのは現場の上司です。翻訳の質が、ES施策の成否を左右します。

原因3:マネージャーが現場の実装役になれていない

3つ目の原因が、マネージャーがカルチャーの実装役になれていないケースです。経営が描いた施策を現場で再現する翻訳機が機能しないと、ES施策は壁に貼ったポスターと変わりません。

経営者がどれほど熱意を持って語っても、30人を超える組織ではメンバー全員の行動を直接マネジメントできません。

経営の思想を、現場の業務で実行できる言葉に翻訳してフィードバックする役割は、構造的にマネージャーしか担えません。

ところが多くの企業では、マネージャー自身がプレイヤー業務に追われ、翻訳役としてのスキルも時間も不足しています。

マネジメント研修が「いい話を聞いた」で終わり、現場の行動が変わらない構造的な原因はここにあります。

マネージャー育成の体系的な進め方は、マネージャー育成の完全ガイド|失敗しない4つのステップをプロが解説で詳しく整理しています。

ES施策を本気で機能させるなら、施策の起点をマネージャーの育成と業務設計に置く必要があります。

従業員満足度を高める5つの取り組み

形骸化の3原因を踏まえると、ES向上に必要なのは制度の増設ではなく「行動の翻訳」だと分かります。

現場で機能する5つの取り組みを、優先順位に沿って解説します。

  • 取り組み1:経営理念を「行動指針」に翻訳する
  • 取り組み2:マネージャー育成で観測可能行動を定義する
  • 取り組み3:1on1を定点観測の場に転換する
  • 取り組み4:評価制度にカルチャー体現度を組み込む
  • 取り組み5:働き方・福利厚生は土台として整える

取り組み1:経営理念を「行動指針」に翻訳する

最初の取り組みは、経営理念を行動指針に翻訳することです。理念を抽象的なメッセージで終わらせず、現場の判断基準として使える言葉に落とします。

たとえば「顧客中心」という理念を「自社都合の納期より、顧客の業務サイクルに合わせた提案を優先する」「商談後24時間以内に議事録と次アクションを返す」のように、具体的な行動様式に翻訳します。

マネディクが支援する成長企業では、経営理念を5〜7個の行動指針に分解し、評価項目や1on1の問いかけに組み込むケースが多く見られます。理念は唱和ではなく行動の運用で浸透します。

行動指針の設計手順や成長企業の具体事例は、以下の関連記事で詳しく整理しています。


行動指針の作り方とは?成長企業の事例や浸透方法を解説

ベンチャー・成長企業が従業員を巻き込み、日々の行動に落とし込める「生きた行動指針」を作る具体的なステップと、評価制度と連動させた浸透の仕組みを実践的に解説します。

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ES向上の文脈では、この行動指針が自社の価値観として共有され、経営理念・ビジョン共感のスコアを底上げします。共感は語りではなく行動で生まれます。

取り組み2:マネージャー育成で観測可能行動を定義する

2つ目は、マネージャー育成への投資です。ES向上の鍵が現場のマネジメントにある以上、ここを起点にしなければ施策は機能しません。

マネディクの研修では、マネージャーが扱うべきテーマを「観測可能な行動」に分解するワークを軸に据えています。

「部下を承認する」ではなく「週次の1on1で本人の成果を1つ取り上げ、評価した理由を言語化して伝える」と、誰が見ても再現できる粒度で定義します。

成長フェーズの企業では、マネージャー自身がプレイングに追われ、マネジメントの優先順位が下がります。

事業合理上、ES向上はマネージャーの稼働の何%をマネジメントに割くかという経営判断と切り離せません。

研修だけで完結させず、スキルマップによる行動の見える化と週次のフィードバックルーチンをセットで運用することが定着の条件になります。

取り組み3:1on1を定点観測の場に転換する

3つ目は、1on1の目的を絞り直すことです。育成や目標設定、評価面談やメンタルケアまで詰め込むと、結局すべてが薄くなります。

マネディクが提案しているのは、1on1の主目的を「びっくり退職の防止」に置く運用です。最低限これさえ回避できれば1on1の手段にはこだわらない、と公言する大手企業のCHROもいます。

具体的には、毎回同じ問いを投げかけメンバーの表情や声のトーン・言葉選びの変化を観察します。

「最近で一番モヤッとした出来事は何か」「今の業務で一番手応えがあるものは何か」のように、定点観測できる問いを設計します。

育成や評価は別の場で行えばよいという割り切りが、1on1の質を引き上げ、結果としてESの主要要素である「上司のマネジメント」のスコアを安定させます。

1on1が形骸化する原因と立場別の打ち手は、1on1の形骸化はなぜ起こる?原因と対策を立場別に徹底解説で整理しています。

取り組み4:評価制度にカルチャー体現度を組み込む

4つ目は、評価制度に「カルチャーの体現度」を組み込むことです。数値成果だけでなく、自社の行動指針をどれだけ体現したかを評価対象にします。

成長ベンチャーでは事業の前提が頻繁に変わり、KPIや目標も流動的になります。そのため、数値成果のみで評価すると、事業ピボットに巻き込まれて損をした人が割を食う構造になりがちです。

カルチャー体現度を評価軸に入れると、事業環境が変わっても評価の物差しが揺らぎません。

マネディクが支援した企業の中には、評価ウェイトを「成果50%・カルチャー体現50%」に切り替えて、キーマンの離職率を大きく下げた例があります。

納得感のある評価制度の作り方や運用上の落とし穴は、納得感のある評価制度とは?作り方の5ステップと不満を解消する運用の仕方を解説で詳しく取り上げています。

ただし、カルチャー体現度はマネージャー間で評価のばらつきが出やすい項目です。Googleで運用されているキャリブレーションのように、評価会議で目線を揃える運用とセットで設計する必要があります。

取り組み5:働き方・福利厚生は土台として整える

最後は、働き方や福利厚生の整備です。ここはあくまで衛生要因への投資ですが、不足するとES全体の足を引っ張るため、土台として整える必要があります。

具体的には、長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入、健康支援やライフイベント対応の制度設計などです。

これらは「ないと不満になる」要素であり、整備されたからといってエンゲージメントは高まりません。

総務省の労働力調査でも、テレワーク継続を希望する就業者は依然として多数派です。働き方の選択肢を整えることは、人材確保の前提条件になっています。

注意すべきは、福利厚生の拡充をES向上策の中心に据えないことです。動機付け要因への投資が薄いまま衛生要因だけ厚くしても、満足はしても熱量は生まれません。

土台はあくまで土台と位置づけ、上物の設計に経営の力点を置くべきです。

5つの取り組みの中核は、マネージャーがカルチャーの実装役になることです。

取り組みを自社で動かす際の整理材料として、エンゲージメント改善 実践チェックシートを活用すると、サーベイスコアが改善しない原因を管理職の日常行動の切り口で点検できます。

従業員満足度調査の進め方

ES向上施策を機能させるには、その前提となる調査設計の精度が問われます。従業員満足度アンケートや関連サーベイをただ実施するだけでは、現場の行動は変わりません。

スコアを取ること自体ではなく「次の行動につながる調査」を設計するための4ステップを解説します。

  1. ステップ1:目的と「測りたい行動」を定義する
  2. ステップ2:質問項目を設計する
  3. ステップ3:全社告知と回答率を高める運用
  4. ステップ4:結果分析とフィードバック設計

ステップ1:目的と「測りたい行動」を定義する

調査設計の起点は、目的の明確化です。何のためにESを測るのか、測ったあとに何を変えたいのかを言語化します。

得てして、調査会社のテンプレートに沿って質問項目を決め、結果が出てから「さて何をしようか」と考える流れになりがちです。これでは結果が施策に翻訳されません。

マネディクが推奨しているのは、調査前に「上がってほしい行動」を定義する手順です。

たとえば「上司が部下に対して、月1回以上は業務上の手応えを言語化する」という行動を増やしたいなら、それを測れる質問項目を設計します。

目的を結果指標で固定せず「現場のどの行動を増やしたいか」という行動指標とセットで定義することが、形骸化を避ける第一条件です。

ステップ2:質問項目を設計する

次に、目的に沿った質問項目を設計します。5つの構成要素の網羅と、自社固有の論点をバランスよく組み合わせます。

質問例としては「自分の仕事が組織の成果にどう貢献しているか説明できる」「上司は自分の成果を具体的な言葉で承認している」「評価結果について納得できる説明を受けている」などが挙げられます。

このように、行動レベルで聞ける設計が有効です。

「総合的に満足しているか」のような抽象設問だけでは、改善アクションに翻訳できません。

マネディクの支援先では、抽象設問を最低限に抑え、行動の有無を確認する設問の比率を高める設計を採用しています。

回答形式は5〜7段階のリッカート尺度が一般的です。自由記述欄は読み解きのコストが大きい一方、定量データでは見えない兆候を捉えられるため、優先テーマに絞って配置します。

ステップ3:全社告知と回答率を高める運用

調査の信頼性は、回答率の高さに比例します。50%を下回ると、集計結果は自社の実態を表していない可能性が高まります。

回答率を上げる打ち手は単純です。経営からの調査目的の明示・回答時間の業務時間内確保・結果フィードバックの実施の3点を、運用前に約束します。

マネディクが支援する企業では「前回の調査結果を踏まえてこういう行動を変えた」という実績を経営層から先に伝えることで、回答率が大きく改善した事例があります。

回答することで自社が変わると体感できると、参加意欲は自然に高まります。

逆に、結果が共有されない・施策に反映されないと感じると、回答率は加速度的に下がります。形骸化はここから始まります。

パルスサーベイなど高頻度調査の運用上の落とし穴は、パルスサーベイは本当に意味がない?運用のメリット・デメリット、効果的な運用方法を解説で詳しく整理しています。

ステップ4:結果分析とフィードバック設計

最後のステップは、結果分析と現場へのフィードバックです。データを集計するだけでなく、現場の行動に翻訳して返すところまでが調査設計に含まれます。

分析では、全社平均だけでなく、部署・職種・等級別の差分に注目します。

同じ会社の中でも、上司の関わり方によってスコアが大きく分かれる傾向があるため、マネジメントの効くポイントを特定する手がかりになります。

フィードバックは、経営・部門長・マネージャー・現場メンバーの4階層で設計します。

経営層には全社的な傾向と打ち手の優先順位、部門長以下にはそれぞれの責任範囲と取るべき行動を、抽象論ではなく観測可能な行動レベルで伝えます。

このフィードバック設計の質が、次回調査までに現場の行動がどれだけ変わるかを決めます。調査は実施が目的ではなく、行動変容のサイクルを回す起点に位置づけ直します。

従業員満足度に関するよくある質問

従業員満足度とエンゲージメントの違いは何ですか

ESは「不満の少なさ」、エンゲージメントは「前向きな関与の度合い」を測ります。両者は補完関係にあり、ESを土台に整えた上で、自発的な貢献意欲を引き出すエンゲージメント施策に重ねる設計が事業合理的です。

従業員満足度が高い企業に共通する特徴は何ですか

共通点は、理念が行動指針まで翻訳されていること・マネージャーが現場の実装役を担えていること・評価制度にカルチャー体現度が組み込まれていることの3点です。制度より運用の質に投資する企業ほどESが安定します。

従業員満足度のKPIや指標はどう設計しますか

スコア単独より、行動指標とセットで設計するのが有効です。たとえばESスコアと並走させて、1on1で困りごとが言語化された件数を行動指標に置く設計が、形骸化を防ぎます。

従業員満足度調査の質問項目の例を知りたいです

自社の仕事の意味・上司のフィードバックの具体性・評価結果の納得感・理念への共感・職場での発言しやすさが基本の5観点です。行動の有無を聞く設問の比率を高めると、改善アクションに翻訳しやすくなります。

調査の頻度はどのくらいが適切ですか

年1回の本調査に加え、四半期ごとの簡易パルスサーベイを組み合わせる運用が、負荷と精度のバランスが取りやすい形です。変化の速い企業ほど、簡易調査の頻度を上げて軌道修正に使うのが有効です。

中小企業でも従業員満足度調査は必要ですか

規模が小さいほど人材の代替性が低く、1人の離職インパクトが大きいため、ESの可視化は中小企業ほど重要です。大規模な調査ツールがなくても、5問程度のパルスサーベイから始める設計で十分に運用できます。

まとめ:従業員満足度を業績に接続するために

従業員満足度(ES)は、仕事・人間関係・上司・評価処遇・理念ビジョンの5要素で構成され、生産性・人材定着・顧客満足の3つに波及する経営指標です。

ES向上が形骸化する原因は、満足の目的化・観測可能行動への未翻訳・マネージャーの実装機能不全という3つの構造に集約されます。

形骸化を避ける打ち手は、経営理念の行動指針への翻訳・マネージャー育成の徹底・1on1の定点観測化・評価制度へのカルチャー体現度の組み込み・衛生要因としての福利厚生整備という5つです。

マネディクが300社以上の支援で繰り返し確認してきた事実として、ES向上の起点はマネージャー育成にあります

制度の増設より、現場で運用する人の翻訳力に投資する経営判断が、事業成長とESを両立させる最短ルートになります。

マネディクは300社以上の組織開発支援を通じて、ESとエンゲージメントを業績に接続する研修設計を磨き続けてきました。

以下の資料では、サーベイスコアが改善しない原因を管理職の日常行動の切り口で分析し、10項目のチェックシートで自社の現状を診断できます。自社の打ち手を組み立て直す際の比較材料として活用できます。


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川﨑 俊介
記事を書いた人
川﨑 俊介

新卒で当時6期目(60~70名規模)の株式会社ジーニーへ入社。入社後3年間でリーダー、マネ―ジャー、部長とマネジメント経験を積み、入社後4年目で事業責任者兼執行役員に就任。組織も300名を超え、グロース上場を経験。 その後海外事業など含む複数事業の責任者、常務執行役員を経て、2022年に取締役に就任。経営企画や人事などコーポレート領域も管掌。組織規模としても1000名を突破。 2024年4月に独立し、個人で人事・経営コンサル業も成長企業に対して実施しつつ、同年12月にマネディク株式会社CEO/アクシス株式会社取締役COOにも就任。

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