組織開発

1on1の形骸化はなぜ起こる?原因と対策を立場別に徹底解説

1on1の形骸化はなぜ起こる?原因と対策を立場別に徹底解説
目次

なぜあなたの会社の1on1は形骸化するのか?4つの構造的課題

多くの企業で導入されている1on1ミーティング。
しかし、「ただの雑談で終わってしまう」「業務報告会になっている」など、形骸化に悩む声は後を絶ちません。本来、個人の成長を促し、組織力を高めるはずの対話が、なぜ「形だけ」のものになってしまうのでしょうか。

その背景には、多くの組織に共通する4つの構造的な課題が存在します。

課題1:そもそも「何のためにやるのか」目的が共有されていない

形骸化の最も根本的な原因は、1on1の「目的」が曖昧なまま、実施すること自体が目的化しているケースです。

「会社の方針だから」「週に1回やると決まっているから」という理由だけで場を設けても、上司と部下の間で目的意識が共有されていなければ、中身のある対話にはなりません。目的が不明確なため、何を話すべきか分からず、結果として表面的な雑談や業務の進捗確認に終始してしまうのです。

課題2:「何を話せばいいか」が分からず、アジェンダが枯渇している

回数を重ねるうちに「話すことがない」という問題に直面するマネージャーは少なくありません。

特に、プレイングマネージャーとして多忙な日々を送る中で、毎回有意義なテーマを準備するのは大きな負担です。「最近どう?」という問いかけから始めても、部下から「特に問題ありません」と返され、気まずい沈黙が流れる…そんな経験が続けば、1on1自体が双方にとって苦痛な時間になってしまいます。

課題3:マネージャーの対話スキル不足で、部下が本音を話せない

1on1は、上司と部下がクローズな場で対話をするため、部下の本音や悩みを相談しやすい場です。
しかし、多くのマネージャーは「傾聴」や「質問」といった対話の専門的なトレーニングを受けていません。そのため、無意識のうちに部下の話を遮ってアドバイスをしてしまったり、詰問のような形で問い詰めてしまったりすることがあります。

このような状況では、部下は「何を言っても評価に繋がるのでは」と萎縮し、本音を話すことができません。心理的安全性が担保されていない対話は、信頼関係を損なう原因にもなります。

課題4:「個人のスキル」に依存し、組織的なサポートがない

多くの企業で、1on1の成否は現場のマネージャー個人のスキルや意欲に丸投げされています

会社として「1on1をやりなさい」と指示はするものの、その目的や具体的な進め方に関するガイドラインはなく、マネージャーを育成・支援する仕組みもありません。これでは、一部の優秀なマネージャーの部署では機能しても、組織全体として1on1の質を担保することは不可能です。
結果として、部署ごとに大きな質のバラつきが生まれ、会社全体の制度として機能不全に陥ってしまうのです。

そもそも1on1とは?目的別に理解する3つの型

形骸化の原因を理解した上で、次に「では、自社はどこを目指すべきか」を考える必要があります。1on1は、その目的によって大きく3つの型に分類できます。

自社の状況に合わせて、どの型を目指すのかを明確にすることが、形骸化を防ぐ第一歩です。

型1:経験学習を促進する「成長支援型」

部下の日々の業務経験を成長に繋げることを目的とする1on1です。

成功体験や失敗体験を対話の中で振り返り、部下自身に学びや気づきを促します。
「今回のプロジェクトで一番大変だったことは?」「その経験から何を学んだ?」といった問いかけを通じて内省を深め、次のアクションに繋げます。
中長期的なキャリアプランについて話し合う場としても有効です。

型2:信頼関係を築く「エンゲージメント向上型」

部下が抱える業務上の悩みや人間関係の不安、業務に影響のあるプライベートの課題などを共有してもらい、上司として寄り添い、サポートすることで、働きがいや会社への貢献意欲を高めることを目的とします。

部下の価値観やコンディションを深く理解し、信頼関係を築くことで、モチベーションの向上や離職防止に繋がります。

型3:現場の課題を吸い上げる「組織課題解決型」

現場で起きている業務上のボトルネックや、非効率なフロー、人間関係の問題などを早期に発見し、組織全体の課題解決に繋げることを目的とします。
マネージャーが現場のリアルな情報を吸い上げることで、経営層が気づきにくい問題が可視化され、事業や組織の改善に繋がる重要な機会となります。

形骸化を乗り越えるための3つの実践ステップ

1on1が形骸化する原因と、本来目指すべき目的を理解したら、いよいよ具体的な改善アクションに移ります。
ここでは、3つの実践ステップをご紹介します。

Step1:1on1の「目的」と「アジェンダ」を再設計する

形骸化の最大の原因である「目的の不在」を解消することから始めましょう。

マネージャーのアクションとしては、まず前述の「3つの型」を参考に、自分のチームの状況に合わせて「今回の1on1では、部下の成長支援に焦点を当てよう」「今月は、新メンバーの不安解消のためにエンゲージメント向上を目的としよう」といった形で目的を明確に言語化します。
そして、その目的を部下と事前に共有することが重要です。

【そのまま使える!目的別アジェンダテンプレート】

目的

アジェンダ項目例

成長支援型

  1. 最近の業務で最も学びが大きかったこと 
  2. 今後挑戦したい業務や役割について 
  3. そのために、現在伸ばすべきスキルは何か 
  4. 次の1ヶ月の具体的な目標設定

エンゲージメント向上型

  1. 健康状態やプライベートも含めたコンディション確認 
  2. 現在の業務でやりがいを感じている点、逆に負担に感じている点 
  3. チーム内の人間関係やコミュニケーションで気になっていること
  4. 上司や会社に対してサポートしてほしいこと

組織課題
解決型

  1. 業務を進める上で、非効率だと感じているフローやルール 
  2. 部署間連携で困っていること 
  3. 顧客から受け取った、サービス改善に繋がりそうな意見 
  4. チームの目標達成のために、ボトルネックとなっている課題

Step2:部下の本音と成長を引き出す対話の技術

目的とアジェンダが決まったら、次はその目的を達成するための「対話の質」を高めるステップです。重要なのは、心理的安全性を確保し、部下が安心して本音を話せる場を作ることです。

マネージャーのアクションとしては、「傾聴」と「質問」、そして「未来志向のフィードバック」を意識することが求められます。
ここで注意すべきなのは、部下の話に真剣に耳を傾け、安易に結論を出したり、自分の意見を押し付けたりしないこと。そして、「なぜできなかったのか?」という過去を問う質問だけでなく、「どうすれば次はできそうか?」という未来を共に考える質問を投げかけることが重要です。

Step3:個人のスキルに依存しない「仕組み」を構築する

1on1の質を、マネージャー個人の頑張りだけに依存させてはいけません。
組織として1on1を成功させるための「仕組み」を構築することが大切です。

まず、経営トップが自らの言葉で「なぜ我が社は1on1を重視するのか」という目的と期待を全社に発信することが不可欠です。これにより、1on1が単なる現場の業務ではなく、重要な経営活動であるという認識が浸透します。

次に、マネージャーへの「丸投げ」をやめ、育成とサポート体制を整備します。
定期的な研修の実施はもちろん、マネージャー同士が1on1の悩みや成功事例を共有し合える場を設定することも有効です。

そして最後に、最も重要なのがマネジメントの「型」を組織のスタンダードにすることです。
多くのマネージャーは、自身がプレイヤーとして優秀だったために抜擢されますが、マネジメントの体系的な教育を受ける機会がないまま、「我流」で手探りのマネジメントを行っています。
これこそが、1on1が形骸化する根本的な原因です。

ツールを導入して対話を可視化するだけでは、この問題は解決しません。
重要なのは、マネージャー自身が「マネジメントとは何か」「部下の成長をどう支援すべきか」という原理原則を学び、自信を持って実践できるようになることです。

私たちマネディクは、まさにこの課題を解決するための管理職育成支援サービスです。これまで300社以上の成長ベンチャーを支援してきた知見を基に、1on1の小手先のテクニックだけでなく、目標設定、評価、フィードバック、カルチャー作りといったマネジメントの根幹を体系的に学ぶプログラムを提供しています。マネージャーのマネジメント力を組織的に底上げすることこそ、形骸化した1on1を根本から変え、事業を成長させる対話を生み出すための最も確実な一歩になります。


成長ベンチャーに特化した組織カルチャー構築プログラム「マネディク」サービス資料 |マネディク|管理職育成支援サービス

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まとめ:形骸化した1on1から、「事業を成長させる対話」へ

1on1の形骸化は、単なる「ミーティングのマンネリ化」ではありません
組織内でコミュニケーションが機能不全に陥っている危険なサインであり、放置すれば社員のエンゲージメント低下や、キーマンの突然の離職といった深刻な事態を招きかねません。

しかし、今回ご紹介したステップに沿って、その目的を再定義し、対話の質を高め、組織として支える仕組みを構築すれば、1on1は大きな武器に変わります

「部下の成長を実感し、チームとしての一体感を醸成する場に」
「 現場のリアルな声を吸い上げ、事業成長のボトルネックを解消する羅針盤に」

この記事を読んで、もし「マネジメントの原理原則から体系的に学びたい」「組織全体のマネジメントレベルを底上げしたい」と感じられたら、ぜひ私たちマネディクにご相談ください。
300社以上の成長ベンチャーを支援してきた知見を基に、貴社の1on1を「事業を成長させる対話」へと変革するお手伝いをします。


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川﨑 俊介
記事を書いた人
川﨑 俊介

新卒で当時6期目(60~70名規模)の株式会社ジーニーへ入社。入社後3年間でリーダー、マネ―ジャー、部長とマネジメント経験を積み、入社後4年目で事業責任者兼執行役員に就任。組織も300名を超え、グロース上場を経験。 その後海外事業など含む複数事業の責任者、常務執行役員を経て、2022年に取締役に就任。経営企画や人事などコーポレート領域も管掌。組織規模としても1000名を突破。 2024年4月に独立し、個人で人事・経営コンサル業も成長企業に対して実施しつつ、同年12月にマネディク株式会社CEO/アクシス株式会社取締役COOにも就任。

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