組織開発

組織崩壊の立て直しには何をすればいい?|立て直し方法から原因までを徹底解説

組織崩壊の立て直しには何をすればいい?|立て直し方法から原因までを徹底解説
目次

「優秀な社員から、静かに会社を去っていく」
「会議は沈黙ばかり。部署間の対立は日常茶飯事」
「組織の雰囲気がギスギスしていて最悪...」

あなたの組織が今まさに直面しているその状況は、まさしく「組織崩壊」と呼ぶべきものです。
その責任の重さに押しつぶされそうな感覚や、どこから手をつけていいか分からない途方もない孤独を感じているのではないでしょうか。

この記事では、崩壊した組織を立て直すための実践的なロードマップを解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたが「明日から何をすべきか」が明確になっているはずです。

組織崩壊とは?その定義と見逃してはいけない危険な兆候

そもそも「組織崩壊」とは、組織が本来の目的を達成するための機能を失い、自律的な改善や成長が不可能な状態を指します。それはある日突然訪れるのではなく、静かに進行します。

あなたの組織に、以下のような兆候は現れていないでしょうか。
複数当てはまる場合、崩壊がすでに始まっている、あるいはかなり進行している危険なサインです。

  • 【人材の流出】優秀な社員や将来を期待された若手から辞めていく
  • 【コミュニケーション不全】会議で誰も発言せず、部署間の連携が取れない

  • 【士気の低下】社員に諦めの空気が蔓延し、新たな挑戦を冷笑する雰囲氣がある

  • 【責任感の欠如】問題が起きても誰も責任を取らず、責任の押し付け合いが始まる

  • 【理念の形骸化】会社のビジョンや理念が誰にも語られなくなる

これらの兆候は、組織の至る所できしみが発生している証拠であり、放置すれば、最悪の事態を招きかねません。

組織崩壊からの立て直しステップ

組織の危機的状況を認識したら、次に行うべきは具体的な行動です。
立て直しは闇雲に進めても成功しません。ここでは、崩壊した組織を再生させるための具体的な4つのステップを解説します。

ステップ1:組織の課題を客観的に把握する

立て直しの第一歩は、組織が今どのような状態で、何が問題なのかを正確に把握することです。
組織状況を丁寧かつ適切に把握していくことが組織崩壊を立て直すためには最も重要です。

客観的な事実を集めるために、以下の方法で「組織状態のチェック」を行いましょう。

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組織状況のチェック

  • 匿名サーベイの実施
    • 従業員エンゲージメントサーベイなどを活用し、従業員が感じている課題や不満を匿名で収集します。本音を引き出すためには、プライバシーの保護を徹底することが重要です。
  • キーマンへの個別ヒアリング:
    • 特に信頼できる社員や、影響力の大きいベテラン社員、あるいは不満を抱えていそうな社員と1on1の場を設けます。「会社を良くするために、率直な意見を聞かせてほしい」と真摯に伝え、現場の生の声に耳を傾けましょう。

ステップ2:進むべき未来(再生ビジョン)を定義し、共有する

組織の「状態」を把握したら、次に行うべきは「どこに向かうのか」という未来を明らかにすることです。多くの崩壊が起こっている組織は、進むべき道を見失っています。

社員が再び同じ方向を向いて歩き出すためには、明確な「再生ビジョン」が不可欠です。

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再生ビジョン定義の方法

  • WHYから始める:
    • 「私たちは、なぜこの事業を行っているのか?」「社会にどんな価値を提供したいのか?」という、企業の存在意義の根幹を問い直しましょう。創業時の想いに立ち返ることも有効です。
  • あなた自身の言葉で語る:
    • 組織崩壊を立て直すのに、コンサルタントが作ったような美しい言葉である必要はありません。トップマネジメント自身の経験や想いを乗せた言葉で目指すべき方向性(ビジョン)を語ることが、社員の理解と共感を促し、納得感を高める一歩となります。
  • キーマンを巻き込む:
    • 完成したビジョンをトップダウンで押し付けるのではなく、可能であれば策定段階からキーマンを巻き込みましょう
    • 共にビジョンを創り上げるプロセスが、当事者意識を生み出すだけでなく、トップマネジメントと共にキーマンを組織変革の協力者になってもらいましょう。彼らがハブとなり、再定義された組織の目標を各事業部やチームに伝播させ、具体的なアクションへと翻訳していくことで、ビジョンは全社に浸透していきます。

ステップ3:ビジョンを具体的な計画に落とし込み、実行する

再生ビジョンという羅針盤を手に入れたら、いよいよ具体的な変革の実行フェーズに移ります。
ビジョンを絵に描いた餅で終わらせないため、組織の制度や仕組みに落とし込んでいきましょう

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制度や仕組みに落とし込む方法

  • 指揮系統と役割の明確化:
    • 「誰が何を決めるのか」「誰が何に責任を持つのか」が曖昧になっているケースは非常に多いです。組織図や役割定義書を見直し、責任と権限を明確にしましょう。
  • 評価制度の見直し:
    • ビジョンで示された方向性と、人事評価制度を連動させます。例えば、「挑戦」をビジョンに掲げるなら、失敗を許容し、挑戦したプロセスを評価する仕組みが必要です。
  • 目的志向のコミュニケーションを仕組み化する:
    • 組織崩壊に陥る企業では、コミュニケーションが不足している、あるいは目的から逸れていることがほとんどです。目的に沿わないコミュニケーションは、社員間の認識のズレを生み、組織の歪みを大きくする一因となります。この歪みを是正し、組織を再生させるためには、目的に沿った会議や1on1を仕組みとして導入し、全体の方向性を揃えることが不可欠です。

ステップ4:変革を一過性で終わらせず、組織文化として定着させる

変革施策は、実行して終わりではありません。
一過性のイベントで終わらせず、組織の「当たり前」=文化(カルチャー)として定着させていくプロセスが最も重要であり、最も忍耐力が必要です。

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文化(カルチャー)として定着させていくプロセス

  • トップマネジメント自身が率先垂範する:
    • 新しいルールや価値観を、誰よりもあなた自身が体現し続けることが重要です。「言行一致」の姿勢が、変革の本気度を社員に伝えるためには大切です。
  • 小さな成功を称賛し、変革の意義を証明する:
    • 変革の過程で生まれた小さな成功事例や、新しい価値観に沿った行動をした社員は、積極的に称賛しましょう。変革が「正しい方向に進んでいる」という具体的な証拠を組織に示し、浸透させていくためには重要なことです。
    • 成功体験の共有は、他の社員の行動変容を促すだけでなく、変革への懐疑的な見方を払拭し、ポジティブな勢いを生み出す合理的な手段となります。
  • 賛同者を巻き込み、多方面から発信する:
    • なぜこの変革が必要なのか。トップマネジメントが一人が発信し続けても、声は届きにくいものです。ステップ2でもご説明したように、時には頭を下げてでも、ビジョンに賛同してくれるキーマン(管理職=マネージャーを推奨)や管理職を巻き込み、組織のハブとして彼らの言葉でも語ってもらいましょう。
    • 様々な立場の人から同じメッセージが発信されることで、ビジョンは組織全体の共通認識となり、文化として深く浸透していきます。

なぜ組織は崩壊に至ったのか?見直すべき3つの根本原因

効果的な立て直しと再発防止のためには、表面的な問題だけでなく、その根底にある「要因」を特定する必要があります
組織崩壊は、多くの場合、以下の3つの原因が複雑に絡み合って発生します。

1. ビジョン・理念の形骸化

企業の成長過程で、創業時に掲げていたはずのビジョンや理念が、いつの間にか「壁に飾られた額縁」のようになってしまうことがあります。

進むべき方向性という共通言語を失った組織では、社員は「何のためにこの仕事をしているのか」という目的意識を見失い、エンゲージメントを失った社員の離職や、社内派閥の形成につながり、組織の一体感は失われていきます

こうした状況では、社員の向かうべき方向を示す「行動指針」を再定義し、浸透させることが極めて重要です。


行動指針の作り方とは?成長企業の事例や浸透方法を解説

「従業員が30名、50名と増えるにつれ、創業時の価値観が薄れてきた…」 「部門間の連携がうまくいかず、昔は言わなくても伝わっていた意思疎通が機能しない…」 上記の悩みのように事業の急成長に伴う「組織の成長痛」は、価値観の希薄化や部門間の連携不足を引き起こし、成長を鈍化させる恐れがあります。この壁を乗り越える鍵が、組織の共通言語となる「行動指針」です。 本記事では、ベンチャー・成長企業が従業員を巻き込み、日々の行動に落とし込める「生きた行動指針」を作るための具体的なステップ、失敗しないための注意点、そして評価制度と連動させた浸透の仕組みまで、企業の事例を交えながら実践的に解説します。

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2. リーダーシップの欠如とマネジメント不全

経営層から発信されるメッセージに一貫性がなかったり、現場の管理職がプレイヤーとして優秀なだけで、チームを率いるマネジメントスキルを持ち合わせていなかったりする状況は、組織崩壊の大きな要因となります
特に、不公平な評価制度や、部下のキャリアに向き合わない上司の存在は、社員の不満を増幅させ、組織への信頼を根底から破壊します。

3. 成功体験への固執と変化への抵抗

過去の成功体験は、時として未来への足かせとなります

「昔はこのやり方でうまくいった」という考えに固執し、市場や顧客の変化に対応できなくなるのです。変化を拒み、新しい挑戦を冷笑するような空気が蔓延すると、組織は活力を失い、硬直化していきます。

組織立て直しを成功に導くための重要原則

前述のロードマップを効果的に進めるためには、立て直しを担うあなたが常に意識すべき重要な原則があります。
これらは、改革を成功させるための土台となる考え方です。

原則1:避けては通れない「変化への抵抗」と向き合う

組織を立て直すという「変化」には、必ず「抵抗」が伴います
これは特定の個人の問題ではなく、人間の本能的な心理反応です。抵抗する人々を「敵」と見なすのではなく、彼らが抱える不安に寄り添い、徹底的な対話を通じて変革の協力者に変えていく視点が不可欠です。

具体的には、以下のような心理が抵抗の背景にあります。

原則2:変革の力学「組織変革の公式」を理解する

組織変革には組織開発の分野のパイオニアであるリチャード・ベックハードの組織変革の公式があります。

「現状に対する不満のレベル」「説得力のあるビジョン」「変革の実現性の高さ」の3つの要素の掛け算が、変化コスト(負担)よりも大きければ、変革が実現するという公式です。現状への危機感、未来への希望、そして「自分たちにもできそうだ」という実現可能性の3つの掛け算が、変化への抵抗を上回った時に初めて組織は動きます。

原則3:リーダーの行動の一貫性を貫く

崩壊した組織の従業員は、将来への強い不確実性と、経営陣に対する根深い不信感を抱いています

この状況下で、従業員が「改革に協力するか否か」を判断する際、その基準となるのはリーダーの行動が一貫しているかどうかです。
もしリーダーの方針がブレたり、発言と行動が矛盾したりすれば、従業員は「今回の改革も本気ではない」「ついていっても、また裏切られるかもしれない」と合理的に判断します。

結果として、改革への協力を控えるという自己防衛的な行動を選択し、改革は実行力を失い頓挫します。逆に、リーダーの一貫した行動は、「今回の改革は信頼に足る」と従業員が判断するための最も客観的なデータとなります。この一貫性こそが、失われた信頼を再構築し、従業員が安心して改革に参加するための論理的な前提条件となるのです。

原則4:透明性の高いコミュニケーションを徹底する

危機的状況下で情報が不足すると、人はネガティブな憶測でその空白を埋め、不信感や不安を増大させます。したがって、透明性の高いコミュニケーションは、憶測という「情報の空白」を事実で埋めるための合理的な手段です。厳しい現状も含めて情報を包み隠さず共有することが、社員の信頼を再構築し、改革への納得感を醸成する第一歩となります。

まとめ:組織再生は可能。専門家という選択肢も

本記事では、まず組織崩壊の危険な兆候を示し、その上で立て直しのための実践的な4ステップのロードマップを解説しました。

  1. 組織の課題を客観的に把握する
  2. 進むべき未来(再生ビジョン)を定義し、共有する

  3. ビジョンを具体的な計画に落とし込み、実行する

  4. 変革を一過性で終わらせず、組織文化として定着させる

組織の立て直しは、決して平坦な道のりではありません。
しかし、この記事で示したステップを一つひとつ着実に実行すれば、必ず再生への道筋は見えてきます。

しかし、頭で理解することと、実際に実行することの間には大きな隔たりがあることも事実です。
もしあなたが、「何から手をつければいいか分からない」「立て直しを共に進めるパートナーが欲しい」と感じているなら、私たちマネディクにご相談ください。

マネディクは、これまで300社以上の成長ベンチャー企業に対し、マネジメント力向上を通じたカルチャー作りを支援してきました。崩壊した組織の立て直しという困難なミッションを、専門的な知見と実践的なプログラムでサポートします。


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川﨑 俊介
記事を書いた人
川﨑 俊介

新卒で当時6期目(60~70名規模)の株式会社ジーニーへ入社。入社後3年間でリーダー、マネ―ジャー、部長とマネジメント経験を積み、入社後4年目で事業責任者兼執行役員に就任。組織も300名を超え、グロース上場を経験。 その後海外事業など含む複数事業の責任者、常務執行役員を経て、2022年に取締役に就任。経営企画や人事などコーポレート領域も管掌。組織規模としても1000名を突破。 2024年4月に独立し、個人で人事・経営コンサル業も成長企業に対して実施しつつ、同年12月にマネディク株式会社CEO/アクシス株式会社取締役COOにも就任。

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