組織開発

組織開発フレームワークとは?【目的・課題別】代表的な7選を徹底解説

組織開発フレームワークとは?【目的・課題別】代表的な7選を徹底解説
目次

そもそも組織開発(OD)とは?人材開発との違いを整理

組織開発(Organization Development)とは、組織を構成する人材やチーム、部門間の「関係性」に働きかけ、組織全体のパフォーマンスを向上させる取り組みです。

個々の従業員のスキルアップを目的とする「人材開発」とは異なり、組織開発は、社員一人ひとりが自律的に動き、チームとして成果を出せるような「土壌」そのものをつくることを目指します。

変化の激しい現代において、多くの成長企業が組織開発に注目しています。人材の多様化が進み、従来の一律的なマネジメントが通用しなくなった今、社員間の相互作用を活性化させ、変化に強い組織をつくることが不可欠だからです。

組織開発の3つの目的

組織開発が目指すゴールは、大きく以下の3つに集約されます。

  1. 組織の健全性を高める:心理的安全性を確保し、オープンなコミュニケーションが生まれる風土を醸成します。

  2. 組織の生産性を高める:部門間の連携を強化し、チームの相乗効果を最大化することで、組織全体の成果を向上させます。

  3. 外部環境への適応:市場や顧客ニーズの変化に迅速かつ柔軟に対応できる、しなやかな組織体制を構築します。

なぜ、組織開発フレームワークが必要なのか?

「ビジョンは繰り返し伝えている。でも、現場がついてこない…」

「良かれと思って導入した施策が、ことごとくスベる…」

多くの経営者や人事担当者が、このような壁に直面しています。創業時の熱い「想い」だけでは、拡大していく組織を動かすことはできません。

そこで必要になるのが、組織の課題を客観的に捉え、解決へと導く指針となる組織開発フレームワークです。

以下では、経営者と人事担当者視点で組織開発フレームワークの必要性を解説していきます。

【経営者】感覚的な経営から、再現性のある組織づくりへ

創業期は、経営者の情熱とトップダウンの意思決定で事業は成長します。

しかし、社員が30人、50人と増えるにつれ、社長の「暗黙知」は組織の末端まで届かなくなり、いつしか「社長の想い」と「現場の現実」との間に大きな溝が生まれます。これが、多くの成長企業が直面する「組織の壁」です。

フレームワークは、その属人的な「暗黙知」を、誰もが理解・実行できる「形式知」へと転換する設計図です。あなたの頭の中にある成功法則や価値観を、組織の「OS」としてインストールし、再現性のある成長を可能にします

それは単なる管理ツールではありません。創業時の熱い魂を、組織のDNAとして刻み込み、100人、1000人規模になってもブレない「組織文化」を築き上げるための、極めて戦略的な羅針盤なのです。

【人事】場当たり的な施策から、データに基づく戦略的人事へ

「エンゲージメントサーベイのスコアが低い」「離職が止まらない」。そうした事象に対し、研修やイベントといった単発の施策を打つも、効果は長続きせず、疲弊していないでしょうか。

それは、問題の「症状」にのみ対処する「対症療法」に陥っているサインです。

組織開発フレームワークは、組織という複雑な生命体を多角的に診断し、問題の「根本原因」を特定するためのカルテです。

例えば、後ほどご紹介しますが、「マッキンゼーの7S」を用いれば、「戦略(ハード)と人材(ソフト)が連動していない」といった構造的な課題を可視化できます。

これにより、あなたの提案は「人事の意見」から「客観的事実に基づく打ち手」へと昇華され、経営陣への説得力は飛躍的に高まります。さらに、現場社員を巻き込んで課題分析を行うことで、彼らは「やらされ感」から解放され、組織変革の当事者へと変わっていくのです。


【目的・課題別】組織の現在地を知り、未来を描く組織開発フレームワーク7選

ここでは、代表的な組織開発フレームワークを7つ、目的別に紹介します。自社の課題と照らし合わせ、どの「地図」が今、最も必要かを見極めてください。

1. 組織の「あるべき姿」を描く|ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)

こんな課題に有効: 「社員の向いている方向がバラバラ」「理念が浸透せず、判断基準が属人化している」

企業の根幹をなす「Why(なぜ我々は存在するのか=ミッション)」「Where(どこを目指すのか=ビジョン)」「How(どう行動するのか=バリュー)」を言語化する、組織のOSとも言えるフレームワークです。

単なるスローガンではなく、「統一された行動様式」を全社員に浸透させることで、あらゆる意思決定の拠り所となります。

特に組織が急拡大するフェーズにおいて、カルチャーの希薄化を防ぎ、組織の一体感を醸成する上で不可欠です。

メルカリ社が大胆なMVV刷新を通じて、グローバルな組織文化の基盤を築いた事例は有名です。

2. 組織と個人の目標を連動させる|OKR

こんな課題に有効: 「全社目標と個人の業務の繋がりが見えない」「挑戦的な目標設定ができず、組織が停滞している」

企業の野心的な目標(Objectives)と、その達成度を測る具体的な指標(Key Results)を、全社・チーム・個人で連鎖させ、アラインメントを強化する目標管理手法です。

従来のMBO(目標管理制度)が個人の評価に偏りがちなのに対し、OKRは高い頻度(例:四半期ごと)で見直しを行い、組織全体の透明性と俊敏性を高めるのが特徴です。

全社員が「会社の目標達成に自分の仕事がどう貢献しているか」を実感できるため、当事者意識とエンゲージメントの向上に繋がります。

Google社が創業初期から導入し、驚異的な成長を支えたことで知られています。

3. 組織を7つの要素で分析する|マッキンゼーの7S

こんな課題に有効: 「施策がなぜか空回りする」「組織のどこに問題があるのか、根本原因がわからない」

組織を相互に関連し合う7つの要素から多角的に分析する、健康診断のようなフレームワークです。

【ハードの3S】(変更しやすい要素:Strategy戦略、Structure組織構造、Systemシステム)と、【ソフトの4S】(変更しにくい要素:Shared Value共通の価値観、Style経営スタイル、Staff人材、Skillスキル)に分類し、各要素の整合性をチェックします。

例えば、「最新のシステム(ハード)を導入しても、旧態依然とした経営スタイル(ソフト)が邪魔をして活用されない」といった構造的な問題を特定できます。場当たり的な施策から脱却し、問題の根本原因を特定したい場合に極めて有効です。

4. チームの成長段階を可視化する|タックマンモデル

こんな課題に有効: 「新チームがうまく機能しない」「チーム内の衝突が多く、前に進まない」

チームが結成されてから成果を出すまでのプロセスを、①形成期(Forming)→②混乱期(Storming)→③統一期(Norming)→④機能期(Performing)という4つの自然な発達段階で示したモデルです。

特に重要なのは、意見の対立や衝突が起こる「混乱期」は、チームが成熟するために避けては通れない健全なプロセスである、という点です。

マネージャーはこのモデルを理解することで、チームの現状を冷静に把握し、「今は意見をぶつけ合うべき時期だ」と割り切って、対立を乗り越えるためのファシリテーションに徹することができます。

5. 対話を通じて関係性を深める|ワールド・カフェ

こんな課題に有効: 「部門間の連携が悪い(セクショナリズム)」「形式的な会議ばかりで、本音の対話や新しいアイデアが生まれない」

カフェのようなリラックスした雰囲気の中、メンバーを入れ替えながら少人数で対話を重ねることで、組織の集合知を引き出す手法です。

テーブルを移動する際に、各テーブルで出た重要なアイデアを「旅人」として他のテーブルに運ぶことで、多様な視点が混ざり合い、一人では思いつかなかったような創造的なアイデアや解決策が生まれます。

「心理的安全性」が確保された場で本音の対話が促進されるため、部門間の壁を壊し、相互理解を深める効果も期待できます。

6. ポジティブな側面に光を当てる|AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)

こんな課題に有効: 「組織の雰囲気が暗く、メンバーが自信を失っている」「変革に疲弊し、ネガティブな側面にばかり目が行きがち」

従来の課題解決アプローチ(Problem Solving)とは真逆で、組織の「強み」や「成功体験」「価値の源泉」といったポジティブな側面に意図的に焦点を当て、それを未来に向けて増幅させていこうとする考え方です。

発見(Discovery)→夢(Dream)→設計(Design)→実行(Destiny)の4Dサイクルを通じて、メンバーが自社のポテンシャルを再発見し、理想の未来を主体的に描くプロセスを支援します。

変化への抵抗感を和らげ、ポジティブなエネルギーを組織全体に生み出したい場合に有効です。

7. 個人の可能性を最大限に引き出す|コーチング

こんな課題に有効: 「指示待ちのメンバーが多い」「1on1がただの業務報告になっている」「次世代のリーダーが育たない」

上司が答えを与える(Teaching)のではなく、質問を通じて部下の内省を促し、気づきと自発的な行動を引き出すマネジメントスキルです。

コーチングの根幹には、「答えは相手の中にある」という思想があります。これにより、メンバーは自ら考え、行動する「当事者意識」を育むことができます。

1on1を形骸化させず、メンバーの潜在能力を最大限に引き出し、自律的な組織文化を醸成するための、現代のリーダーに必須のスキルと言えるでしょう。

ここまで代表的なフレームワークをご紹介しましたが、これらはあくまで「フレームワーク」です。重要なのは、このフレームワークをどう使いこなし、自社の組織に合わせて、どう適用していくか、という実践的な知見です。

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フレームワーク導入で陥りがちな3つの失敗と、その乗り越え方

フレームワークは何でも解決してくれる万能薬ではありません。

使い方を誤れば、現場を混乱させ、形骸化してしまいます。よくある失敗とその対策を学び、同じ轍を踏まないようにしましょう。

失敗1:目的が曖昧なまま「流行りのフレームワーク」に飛びついてしまう

他社の成功事例やメディアの情報に触発され、「うちもOKRを導入しよう」「1on1が大事らしい」と、課題の解像度が低いまま流行りの手法に飛びついてしまうケースです。

これは、病状がわからないまま薬を処方するようなもので、効果がないばかりか、副作用で現場を疲弊させる危険すらあります。

対策としては、 まずは「Why(なぜやるのか?)」を徹底的に深掘りし、関係者間で腹落ちさせることが不可欠です。

「我々の組織が目指す姿は何か?」「その達成を阻害している根本的なボトルネックは何か?」という問いに立ち返り、課題を特定した上で、初めて「How(どの手法が最適か?)」を検討する、という順番を厳守しましょう。

失敗2:現場を無視して経営・人事だけで進めてしまう

経営陣や人事部だけでフレームワークを学び、「さあ、これを現場で実行しなさい」とトップダウンで押し付けてしまうパターンです。現場からすれば、背景も目的も知らされないまま新たな「仕事」が増えるだけであり、「やらされ感」が蔓延します。

結果として、形だけの運用になったり、陰で「また上が何か始めたよ」と冷笑されたりするのが関の山です。

対策としては、導入の初期段階から各部門のキーマンを巻き込み、ワークショップなどを通じて「自分たちの課題を解決するためのツール」としてフレームワークを共に学ぶ場を設定することが重要です。

彼らが「推進者」として各部署に熱量を伝播していくことで、変革は「自分ごと」として組織に浸透していきます。

失敗3:短期的な成果を求めすぎてしまい、形骸化する

組織開発は、巨大な船の舵を切るようなものです。すぐには変化が見えず、時には一時的に軋轢が生じることもあります。

ここで経営陣が「導入したのに、まだ成果が出ないのか」と焦り、短期的なROIを求めると、担当者はプレッシャーから本来の目的を見失い、取り組みは徐々に尻すぼみになってしまいます。

対策としては、 組織文化という根深いものを変えるには、最低でも1〜2年はかかると覚悟を決めることです。

そして、売上のような結果指標(KGI)だけでなく、「会議での発言が増えた」「部門間の相談が増えた」といった、関係性の質を示す行動指標(KPI)を先行指標として設定し、その小さな変化を称賛し、共有することです。この「スモールウィン」の積み重ねが、変革を続けるための燃料となります。

組織開発を成功に導くための実践5ステップ

実際にフレームワークを活用して組織開発を進める際の、具体的な手順を5つのステップで解説します。

STEP1:目的の明確化と共有(Whyの腹落ち)

「なぜ、今、我々は組織開発に取り組むのか?」―この問いに対する、全社共通の答えをつくるフェーズです。経営合宿で議論を尽くしたり、管理職を集めたワークショップで危機感と目指す姿を共有したりします。

「このままでは事業が立ち行かなくなる」という“Burning Platform”か、「これを実現すればもっと面白い未来が創れる」という“Exciting Opportunity”を、誰もが自分の言葉で語れる状態を目指します。

STEP2:現状把握と課題の特定(As-Is & To-Beのギャップ分析)

目的(あるべき姿)が定まったら、次に現状(As-Is)を客観的に把握します。エンゲージメントサーベイのような定量的データと、社員へのヒアリングやワークショップで得られる定性的な「生の声」の両方を集めましょう。

ここでフレームワーク(例:マッキンゼーの7S)を活用し、集めた情報を構造的に整理することで、症状の裏にある「根本原因」を特定します。

STEP3:アクションプランの策定(具体的なロードマップの設計)

特定した課題を解決するための具体的な打ち手と、その実行計画を立てます。どのフレームワークを、どの部署で、誰が責任者となり、いつまでに、どのような状態を目指すのかを具体的に設計します。

「来月から全社で1on1を開始する」といった曖昧な計画ではなく、「まずは営業部で、〇〇さんを責任者として週1回30分の1on1を実施。3ヶ月後には『部下が自発的に次のアクションを語れる状態』を目指す」というレベルまで解像度を高めます。

STEP4:小規模でのテスト実行と効果検証(PoC:概念実証)

いきなり全社という大海原に乗り出すのではなく、まずは特定の部門や意欲のあるチームを「パイロットチーム」として、小規模にアクションプランを試します。これにより、リスクを最小限に抑えながら、計画の有効性を検証し、改善点や成功の勘所を学ぶことができます。

この段階で得られるパイロットチームからの定性的なフィードバックは、全社展開に向けた何よりの財産となります。

STEP5:全社への展開と定着(仕組み化と文化への昇華)

テスト導入で得られた成功モデルを、他の部署にも展開していきます。ただし、単に横展開するだけでなく、各部署の特性に合わせて微調整することが重要です。

そして最も重要なのが、一過性の「イベント」で終わらせず、評価制度や研修体系、日々の会議体といった既存の「仕組み」に組み込むこと。これにより、新たな取り組みは徐々に組織の「当たり前」となり、やがては血肉である「文化」へと昇華されていくのです。

「組織開発のフレームワーク」に関するよくある質問

Q1. どのフレームワークから始めるべきですか?

A. 組織が抱える最もクリティカルな課題によって異なります。まずは自社の現状を診断することが第一歩です。

  • 「会社の進むべき方向性が定まっていない」「理念が浸透していない」 と感じるなら、組織の根幹をつくる「MVV」から始めるべきでしょう。

  • 「組織のどこに問題があるか分からない」「施策が空回りしている」 のであれば、まずは「マッキンゼーの7S」で組織全体を俯瞰し、課題を構造的に把握することをお勧めします。

  • 「チーム内の連携が悪い」「マネジメントが機能不全に陥っている」 など、より現場レベルの課題であれば「タックマンモデル」「コーチング」が有効です。

Q2. フレームワークを導入すれば、本当に組織は変わりますか?

A. いいえ、フレームワークはあくまで「道具」であり、導入するだけで組織が自動的に変わる魔法の杖ではありません。

最も重要なのは、経営陣の「本気度」と、現場を巻き込む「対話」のプロセスです。フレームワークという共通言語を持つことで、これまで感覚的にしか語れなかった組織課題を客観的に議論できるようになります。

その対話を通じて、社員一人ひとりが「自分たちの会社を良くしていくんだ」という当事者意識を持つことこそが、変革の最大の原動力となります。

Q3. コンサルタントに依頼せず、自社だけで組織開発は可能ですか?

A. 可能です。ただし、成功にはいくつかの条件があります。

第一に、経営トップが組織開発の重要性を深く理解し、強力なリーダーシップで推進すること。第二に、旗振り役となる人事や専門部署に、十分な知識と情熱、そして社内調整能力があることです。

一方で、外部の専門家を入れるメリットは、客観的な視点から自社では気づけない課題を指摘してくれる点や、他社の成功・失敗事例に基づいた実践的なノウハウを提供してくれる点にあります。自社だけで進めることに限界を感じた際は、外部の力を借りることも有効な選択肢と言えるでしょう。

川﨑 俊介
記事を書いた人
川﨑 俊介

新卒で当時6期目(60~70名規模)の株式会社ジーニーへ入社。入社後3年間でリーダー、マネ―ジャー、部長とマネジメント経験を積み、入社後4年目で事業責任者兼執行役員に就任。組織も300名を超え、グロース上場を経験。 その後海外事業など含む複数事業の責任者、常務執行役員を経て、2022年に取締役に就任。経営企画や人事などコーポレート領域も管掌。組織規模としても1000名を突破。 2024年4月に独立し、個人で人事・経営コンサル業も成長企業に対して実施しつつ、同年12月にマネディク株式会社CEO/アクシス株式会社取締役COOにも就任。

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