スキルマップの作り方7ステップ|評価基準と項目例を解説

スキルマップの作り方7ステップ|評価基準と項目例を解説
目次

スキルマップを業務の洗い出しから作ると、項目が増えて運用が止まりがちです。

成果を出している人の行動から項目を作り、評価基準とレベルを定義する作り方を7ステップで、項目例と合わせて300社以上の支援をもとに解説します。

スキルマップとは|作り方は目的で決まる

スキルマップは、社員が持つスキルと習熟度を一覧にした表です。ただ、人材育成に使うのか、配置や評価に使うのかで、載せる項目も書き方も変わります。

作り始める前に、どの用途で使う表なのかを1つに決めておくと、その後の手順で迷いません。

スキルマップの定義と力量表との違い

スキルマップとは、業務に必要なスキルを縦軸に、社員を横軸に並べ、社員ごとの習熟度をレベルや記号で記入した一覧表です。

営業部の例なら、縦に「商談準備」「提案」の項目、横に部員の名前が並び、交わる欄にレベルの数字が入ります。

製造業では力量表や力量管理表と呼ばれることが多く、品質マネジメントの国際規格であるISO9001が求める力量の管理に使われてきました。

個人ごとに項目を確かめるスキルチェックシートやスキル評価シートは、スキルマップから1人分を切り出したものと考えると整理しやすくなります。

呼び名は違っても、中身は項目、レベルの基準、評価結果の3つでできています。作り方で迷うのは、ほとんどの場合この中の項目と基準の書き方です。

人材育成・配置・評価で変わる作り方

配置に使う場合は、誰がどの業務を担当できるかが分かれば足ります。項目は「見積書を作成できる」のような業務単位で、判定も「できる」「できない」に近い形で十分です。

評価に使う場合は報酬に関わるため、評価者による判定のぶれを抑える厳密な基準が求められます。

人材育成に使う場合は事情が違います。次に何をできるようにするかを本人と上司が話す材料なので、項目は「顧客の発言を要約してから提案に入る」のような日々の行動で書く必要があります。

得てして、3つの目的を1枚で同時に満たそうとして項目が膨らみます。最初の1枚は目的を1つに絞り、ほかの用途は運用が回ってから足すほうが、作業量も入力の負担も小さく済みます。

育成全体の仕組みの中でスキルマップをどこに置くかは、人材育成の仕組みを解説した記事で整理しています。

育成用のスキルマップで最も時間がかかるのは「主体的に動く」のような曖昧な言葉を、上司が判定できる行動に書き換える作業です。

人材育成の仕組み化チェックシートでは、育成が属人化する原因を行動の定義から点検し、書き込み式のワークで行動の書き換えを練習できます。

人材育成の仕組み化チェックシート

スキルマップの作り方7ステップ

スキルマップの作成方法は、目的を決め、項目を集め、基準を定義し、試して直す順に進めます。

一般的な手順は業務の洗い出しから始めます。ただ、育成に使うなら、成果を出している人の行動から項目を集めるほうが、現場で使える表になります。

  1. 目的と対象範囲を決める
  2. 成果を出している人の行動を棚卸しする
  3. スキル項目を分類して粒度をそろえる
  4. 項目を観測できる行動の言葉に書き換える
  5. 評価基準とレベルを定義する
  6. 評価者と入力のタイミングを決める
  7. 試験運用して項目を絞り込む

ステップ1:目的と対象範囲を決める

最初に決めるのは、目的、対象とする職種と階層、使い始める時期の3点です。「入社3年目までの営業担当が、独り立ちまでに身につける行動をそろえる」のように、誰の何をそろえるのかを1文で書きます。

使い始める時期は、期初や評価面談の時期に合わせます。記入の習慣を既存の面談に乗せられるため、新しい会議を増やさずに始められます。

対象範囲は狭く始めます。全社・全職種を一度に作ろうとすると、職種ごとの差を吸収するために項目が抽象的になり、どの部署にも当てはまらない表ができあがります。

作成の責任者も、この段階で決めておきます。人事が進行と様式を持ち、項目の中身は対象部署の部門長と、その部署で成果を出している社員が書く分担にすると、現場の言葉で書かれた表になります。

ステップ2:成果を出している人の行動を棚卸しする

一般的な手順では、対象業務を洗い出し、業務ごとに必要なスキルを並べます。ただ、この進め方では業務の数だけ項目が増え、しかも「ヒアリング力」のような能力の名前が並びがちです。

育成に使うスキルマップでは、対象部署で成果を出している社員を2〜3人選び、直近の成功事例を振り返ってもらうところから始めます。

聞く内容は「その案件で、ほかの人がやらないことを何かしたか」「どの場面で何を判断したか」の2つです。

商談前に決裁者の名前を確かめていた、失注の連絡を受けた当日に理由を聞き直していた、といった具体的な行動が出てきます。

マネディクの研修でも、受講者が自分の成功事例を棚卸しし、そこから行動指針を定義する工程を置いています。成果につながった行動から逆算するため、項目数が自然に絞られます。

ステップ3:スキル項目を分類して粒度をそろえる

集めた行動を、大項目と小項目の2階層に分類します。営業なら「商談準備」「提案」「関係構築」のように仕事の流れで大項目を切ると、本人が自分の弱い場面を見つけやすくなります。

粒度は、1回の業務の中で上司が見て判定できる単位にそろえます。「顧客対応」では大きすぎて判定できません。逆に「名刺を両手で渡す」では細かすぎて、成果との関係が見えません。

職種別の項目を一から考えるのが難しい場合は、厚生労働省の職業能力評価基準が参考になります。

2026年10月時点で56業種の基準が公開されており、知識と技能に加えて、成果につながる職務行動例が業種別、職種・職務別に整理されています。

うち16業種には、書き込んで使える職業能力評価シートも用意されています。

使う際は言い回しだけを借り、ステップ2で出てきた自社の行動に置き換えます。そのまま流用すると、どの会社にも当てはまる項目が並びます。

ステップ4:項目を観測できる行動の言葉に書き換える

作り方の中で最も差が出るのが、この書き換えです。「主体的に動く」「顧客志向で考える」のような形容詞や副詞の項目は、評価者によって判定が割れ、本人も何を変えればよいか分かりません。

書き換えの基準は、第三者がその場を見ていたら、やったか、やっていないかを判定できるかどうかです。「頑張る」「徹底する」は項目に使わず、すべて観測できる行動に変換します。

たとえば「コミットメントが高い」は、取引先への返信をその日のうちに返す行動に分解できます。

抽象的な項目

観測できる行動に書き換えた例

主体的に動く

担当外でも期限切れが近い課題に気づいたら、当日中に担当者へ連絡する

顧客志向で考える

提案の前に顧客の発言を要約し、認識が合っているかを確かめる

スピード感がある

回答できない問い合わせにも、当日中に回答予定日を返す

報連相ができる

計画から遅れが出た時点で、遅れの幅と打ち手を添えて上司に報告する

部下を育成できる

週1回、部下の案件を1つ取り上げ、次に試す行動を部下自身に決めてもらう

管理職向けの項目を階層別に整えるなら管理職向けスキルマップの項目例、会社全体の行動指針から個人の項目へ落とすなら行動指針の作り方も参考になります。

もし書き換えの段階で手が止まっているなら、人材育成の仕組み化チェックシートの書き込み式ワークを使うと、自社の項目を題材に練習できます。

ステップ5:評価基準とレベルを定義する

項目が決まったら、習熟度のレベルを定義します。育成目的なら4段階が扱いやすく、段階を増やすほど評価者の迷いが増えます。

レベル

基準

例:提案前に顧客の発言を要約する

1

指導を受けながら実行できる

上司が同席し、促されたときに要約できる

2

1人で実行できる

1人の商談でも、提案前に毎回要約して確かめている

3

難しい場面でも実行できる

相手が複数部署でも、立場ごとの関心を分けて要約できる

4

他者に教えられる

後輩の商談に同席し、要約の抜けを具体的に指摘できる

基準の差は「できる」の度合いではなく、誰の支援で、どのくらいの頻度で、どんな難しさの場面で実行できるかでつけます。

「よくできる」「十分にできる」のような程度の言葉で段階を分けると、評価が中央に寄ります。

表示は◎○△×でも数字でも構いません。各レベルの定義を欄外ではなく項目の横に置き、記入のたびに読める状態にしておくと、評価者ごとの差が縮まります。

ステップ6:評価者と入力のタイミングを決める

育成用であれば、本人の自己評価と上長の評価の両方を入れ、差が出た項目を話し合いの材料にします。

頻度は、育成用なら週次か隔週、配置用なら半期に1回が目安です。育成では、行動を試した記憶が新しいうちに振り返らないと、評価が印象で決まってしまいます。

よく出る懸念は、上長が部下の行動を見ておらず評価できないことです。この場合は360度評価で同僚の目を足し、客観性を補う方法があります。

ただ、上長が部下の行動を把握できていないなら、1人の上長が抱える部下が多すぎるか、上長がマネジメントの時間を取れていないかのどちらかです。スキルマップを整える前に、組織の構造を見直す必要があります。

ステップ7:試験運用して項目を絞り込む

完成したら、全社に配る前に1つの部署で1〜3ヶ月試します。確かめるのは、記入にかかる時間、判定が割れた項目、誰も変化しなかった項目の3点です。

判定が割れた項目は書き換えが足りず、誰も変化しなかった項目は成果との関係が薄いと考えられます。

項目は増やすより減らす方向で直します。項目が多い表ほど入力と上長のコメントが負担になり、提出が止まりやすくなるためです。

期ごとの重点を1〜3項目に絞り、残りは参照用として置いておくと、記入が続きます。

全社へ広げる際は、試験運用した部署と仕事の流れが近い部署から進めます。項目の多くをそのまま使えるため、2部署目以降の作成の手間が小さく済みます。

スキルマップが作って終わりになる3つの原因

スキルマップは意味ないと言われる理由の多くは、表の中身ではなく運用の設計にあります。

作って終わりになる原因は主に3つあり、どれも作成の段階で記入の範囲、締め切り、評価制度との関係を決めておけば防げます。

項目が多すぎて入力が止まる

網羅的に作った表ほど、1回の入力に時間がかかります。プレイングマネジャーが多い組織では、本人の入力も上長の評価も後回しになり、数回で提出が途切れます。

項目の総数を減らす必要はありません。全項目を毎回評価するのをやめ、今期の重点項目だけを週次で記入し、残りは半期ごとの棚卸しで確かめる二層の運用にします。

たとえば営業部で20項目ある表なら、今期は「提案前に要約する」「失注理由を当日中に聞き直す」の2項目だけを毎週記入する形です。

重点項目は、本人と上長が期初の面談で一緒に選びます。選ぶ過程を入れると、なぜその行動を身につけるのかを本人が説明できる状態で始められます。

上長の評価とコメントが返ってこない

本人が自己評価を出しても上長のコメントが返らなければ、本人は記入する意味を感じなくなります。運用が止まった例を振り返ると、上長側の未対応がきっかけになっていることが少なくありません。

対処は、評価の日程を先に決めることです。本人は月曜までに記入し、上長は水曜までにコメントを返す、のように曜日で締め切りを固定し、カレンダーに入れます。

本人の記入からコメントまでの間隔が空くほど、何を試したかの記憶が薄れ、コメントも一般論になります。

コメントは「できていた行動を1つ」「次に試す行動を1つ」の2行に限定すると、上長は短時間で書けます。人事は上長ごとの未対応の件数を月1回確かめ、止まっている上長に個別に声をかけます。

点数が評価制度の材料になり自己評価が甘くなる

作った直後から報酬の評価に直結させると、本人は高めに、上長は無難に点をつけるようになり、表が実態を映さなくなります。

しかし、評価制度とまったく切り離すと、記入する理由が弱くなります。最初の半期は育成専用として運用し、判定の基準が上長の間でそろってきた段階で、行動評価の一部に組み込む順序で両立させます。

組み込む際は、レベルの数字をそのまま点数にせず、重点項目でどんな行動の変化があったかを評価面談の材料にする形が扱いやすくなります。制度側の設計は人事評価制度の作り方で解説しています。

形骸化の原因と弊害を、5つの原因に分けてさらに詳しく確かめたい場合は、次の記事が参考になります。


スキルマップは意味ない?形骸化する5つの原因と効果的な運用方法を解説

スキルマップが形骸化する5つの根本原因と、社員の成長につなげるための運用・管理方法を解説しています。

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スキルマップを人材育成につなげる運用

スキルマップは、作った時点ではまだ一覧表にすぎません。育成の成果に変わるのは、表の項目が日々の会話と研修に組み込まれてからです。

運用で押さえる場面は、1on1、研修、項目の見直しの3つです。どれも新しい会議を増やさず、既存の場にスキルマップを持ち込む形で進めます。

1on1の議題をスキルマップの項目にする

1on1で話すことがなくなる悩みは、スキルマップと組み合わせると解消できます。毎回の1on1で重点項目を1つだけ取り上げ、直近1週間でその行動を試した場面を部下に話してもらいます。

上長が聞くのは「どの場面で試したか」「相手の反応はどうだったか」「次はどの場面で試すか」の3点です。レベルの数字を議論するのではなく、試した事実を確かめることに時間を使います。

部下が試せなかった週は、その理由を聞きます。機会が無かったのか、やり方が分からなかったのかで、上長が次に手伝う内容が変わります。

こうすると、自己評価に根拠が残り、上長も印象ではなく事実で評価できます。1on1の成果をどう測るかは1on1の効果測定の方法で解説しています。

研修のテーマを行動指針に落として回す

研修を受けても現場の行動が変わらない原因の1つは、学んだ内容を職場で使う形に変換する工程が抜けていることです。

マネディクの管理職育成では、事前の動画で共通言語を入れ、ワークで自社の事例に当てはめたうえで、そのテーマを自社の行動指針に書き換えます。この行動指針が、そのままスキルマップの項目になります。

研修のあとは、本人がセルフチェックを入れ、上長が同じ項目にチェックとコメントを返す流れを週次で回します。学んだことを思い出すのが次の研修の直前になる状態を、毎週の記入で防ぐ狙いです。

自社で行う場合も、研修ごとにこのテーマで増やしたい行動を2〜3個書き出し、重点項目に入れるだけで、研修と現場が同じ言葉でつながります。

研修のあとに行動が定着しない原因と対策は、人材育成研修の効果が出ない原因を解説した記事でも扱っています。

四半期ごとに項目を入れ替える

事業の戦略や組織が変われば、求める行動も変わります。成長企業では、半年前に成果につながっていた行動が、今の事業に合わなくなることも珍しくありません。

四半期に1回、人事と部門長で「レベル4の人が増えた項目」「誰も変化しなかった項目」「新しく必要になった行動」の3つを確かめ、重点項目を入れ替えます。

全員がレベル4に達した項目は、新任者向けの表に移します。新しく必要になった行動は、ステップ2と同じく成果を出している社員の事例から作ります。

スキルマップは、行動で書き、週次で回し、四半期で見直すことで育成の仕組みとして機能します。自社の育成がどの段階で止まっているかは、人材育成の仕組み化チェックシートで点検できます。

スキルマップの作り方に関するよくある質問

スキルマップは誰が作るのですか?

人事が進行と様式をつくり、項目の中身は対象部署の部門長と成果を出している社員が書く分担が適しています。

人事だけで作ると、現場で判定できない抽象的な項目が残りやすくなります。

評価のレベルは何段階がよいですか?

育成目的なら4段階が扱いやすく、段階を増やすほど評価者の判断が割れます。

段階の差は、支援の有無、実行の頻度、場面の難しさで定義します。

エクセルとシステムのどちらで管理すべきですか?

対象が1部署で項目が少ないうちは、エクセルやスプレッドシートで十分です。

複数部署で週次の記入と上長のコメントを回す段階になったら、未提出の確認や通知ができるシステムを検討します。

スキルマップのテンプレートを使ってもよいですか?

使えます。厚生労働省の職業能力評価シートや他社の項目例は、分類と言い回しの参考になります。

ただし項目は自社の成功事例で確かめ、自社の言葉に書き換えてから使います。

スキルマップはどのくらいの頻度で更新しますか?

本人と上長の記入は、育成用なら週次か隔週が目安です。

項目の見直しは四半期に1回とし、事業や組織が大きく変わったときは時期を待たずに見直します。

スキルマップのデメリットは何ですか?

作成と入力に工数がかかることと、項目に無い行動が評価されにくくなることです。

重点項目を絞る運用と四半期ごとの見直しで、どちらも小さくできます。

まとめ

スキルマップの作り方で差がつくのは、表の形式ではありません。項目を観測できる行動で書けているかと、作ったあとに回す日程を決めているかの2点です。

読み終えたあとに取る次の一手は、次の3つです。

  • 目的と対象範囲を1文で書き、試験運用する部署を1つ決める
  • その部署で成果を出している社員2〜3人に、直近の成功事例を聞く
  • 本人の記入と上長のコメントの曜日を決め、カレンダーに入れる

マネディクとしては、スキルマップを人事が管理する表ではなく、上司と部下が同じ言葉で行動を振り返るための道具と位置づけています。

300社以上の成長企業の育成を支援してきた中で、育成が回っている会社に共通していたのは、求める行動が誰でも判定できる言葉で書かれていることでした。

行動の書き換えから自社の育成の仕組みを点検したい場合は、人材育成の仕組み化チェックシートが使えます。

人材育成の仕組み化チェックシート

川﨑 俊介
記事を書いた人
川﨑 俊介

新卒で当時6期目(60~70名規模)の株式会社ジーニーへ入社。入社後3年間でリーダー、マネ―ジャー、部長とマネジメント経験を積み、入社後4年目で事業責任者兼執行役員に就任。組織も300名を超え、グロース上場を経験。 その後海外事業など含む複数事業の責任者、常務執行役員を経て、2022年に取締役に就任。経営企画や人事などコーポレート領域も管掌。組織規模としても1000名を突破。 2024年4月に独立し、個人で人事・経営コンサル業も成長企業に対して実施しつつ、同年12月にマネディク株式会社CEO/アクシス株式会社取締役COOにも就任。

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