内定者研修の目的とは?辞退防止の先にある設計と外部活用の判断

内定者研修の目的とは?辞退防止の先にある設計と外部活用の判断
目次

内定者研修の目的を辞退防止だけで決めると、入社後に求める基準が伝わらないまま4月を迎えることがあります。

本記事では、内定者研修とは何か、必要性と目的、内定辞退との関係、違法にならない運用、外部に頼むか自社でやるかの判断基準を整理しました。

延べ300社超の組織開発を支援してきたマネディクの視点でまとめています。

もし内定者フォローに手をかけているのに入社後の新人が受け身になりやすいなら、フォローの中身を見直す時期にきています。

以下の資料では、内定式後から入社直前までの期間に、守る基準と追いつきたい先輩像の両方をつくる内定者プログラムの進め方を紹介しています。


内定者向け「畏敬」構築プログラム|入社後も「お客様気分」が抜けない理由

内定辞退を防ぐための懇親会や面談が、入社後の指示待ちや他責の原因になっていないか。内定期間に基準を示し、未達を見過ごさない内定者プログラムの進め方をまとめた資料です。

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内定者研修とは

内定者研修とは、内定を出した学生に対して入社前に行う研修のことで、入社前研修とも呼ばれます。

業務を教える場というより、入社の時点で会社と内定者の関係をどう始めるかを決める場だと捉えると、設計の軸がぶれません。

内定者研修の定義と実施時期

多くの会社では、正式な内定を出す10月の内定式から、翌年4月の入社までの間に内定者研修を実施します。

形式は集合研修、オンライン研修、eラーニング、課題の提出などさまざまで、複数を組み合わせる会社もあります。

1回で終える会社もあれば、内定式から入社まで数回に分けて実施する会社もあり、回数に決まりはありません。

内定者はまだ学生であり、卒業研究や試験が優先される期間に行う点が、入社後の研修との大きな違いです。

オンラインでの実施形式や運用の手順は、以下の記事で詳しく解説しています。


内定者研修をオンラインで成功させる!設計・運用の全手順を解説

オンラインの内定者研修で成果を出すには?単なる動画配信で終わらせず、内定者の不安解消と帰属意識醸成を叶える設計法を解説。ブレンディッド学習の活用や、入社後の行動変容に繋げるスキルマップ運用など、人事担当者が今知るべき実務知識が満載です。

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新入社員研修との違い

新入社員研修は、雇用契約が始まった後に、業務に必要な知識や行動を教える研修です。

一方の内定者研修は、雇用が始まる前に行うため、業務命令として参加を求めることはできません。

扱うテーマも、業務スキルの習得より、入社後に何を求めるかを伝えることや、同期と先輩との関係づくりが中心になります。

項目

内定者研修

新入社員研修

実施時期

内定式から入社まで

入社後

参加の扱い

任意

業務として実施

主なテーマ

入社後の基準の提示、同期と先輩との関係づくり、企業理解

ビジネスの基礎、職種別の知識、配属後の業務

得てして両者の役割があいまいなまま、内定者研修と入社後の研修で同じビジネスマナーを繰り返している会社は少なくありません。

入社前は基準に向き合う関係をつくり、入社後は業務の実践につなげるという分担で設計すると、重複がなくなります。

入社後の研修で扱う内容は、新卒研修の内容をまとめた記事で整理しています。

内定者研修の目的

内定者研修の目的は、一般に不安の解消、スキルの習得、内定辞退の防止の3つで説明されます。

ただ、入社後の活躍から逆算すると、優先して設計すべき目的は少し違って見えます。マネディクが内定者研修の目的として重視しているのは、次の3つです。

  • 入社前の不安を、具体的な準備に変える
  • 入社後に求める基準を、内定期間のうちに示す
  • 同期と先輩との関係の中で、自分の位置を知る

入社前の不安を減らす

内定者が抱える不安の多くは、配属先や仕事内容、職場の人間関係が見えないことから生まれます。

不安を減らす方法は、手厚くもてなすことではなく、入社後の1年がどう進むかを具体的に見せることです。

たとえば配属までの流れ、最初の3ヶ月で任せる仕事の例、先輩が1年目につまずいた場面の3つを伝えると、漠然とした不安が準備の課題に変わります。

しかし、不安を消すこと自体を目的にすると、厳しい話を避ける方向に流れがちです。

不安の中身を具体にして、自分で準備できる形に変えることが目的だと定義しておけば、次に挙げる基準の提示とも矛盾しません。

入社後に求める基準を先に示す

3つの目的のうち、最も抜け落ちやすいのが基準の提示です。入社後の新人に求めたいことは、期限を守る、指摘を受けたら修正する、悪い報告ほど早く上げるといった行動の基準であることが多いです。

ところが、内定期間にこうした基準を伝えている会社は多くありません。辞退につながるのではと考え、入社してから言えばよいと先送りしてしまうからです。

基準は、入社した瞬間から急に求められるほど、新人にとって唐突に映ります。

内定期間のうちに、守れば認められ、守らなければ指摘されるという関係を経験しておくと、4月からの指摘の受け止め方が変わります。

入社後に伸びる若手の共通点は、行動量と素直さです。どちらも、指摘を受けて行動を変えた経験の積み重ねから身につくため、その最初の経験を内定期間に置く意味は大きいと考えています。

同期と先輩との関係をつくる

同期や先輩との関係づくりは、多くの会社で内定者研修の柱になっています。

ただ、懇親会で仲良くなることと、入社後に伸びる関係をつくることは別物です。

入社後に効いてくるのは、同期の中での比較と、先輩との実力差の体感です。

先輩を憧れのロールモデルとして紹介するだけだと、その先輩が異動や退職をしたときに、内定者の目標ごと失われてしまいます。

先輩のどの行動が成果につながったのかを分解して見せ、自分の課題と照らすベンチマークとして使うほうが長く効きます。

同期とは、課題の提出状況や発表の出来を互いに見られる場をつくると、比較の対象が生まれ、自分の位置が分かるようになります。

内定者研修と内定辞退の関係

内定辞退の防止は、内定者研修の目的として最もよく挙げられます。しかし、辞退防止を主目的にした内定者研修は、入社後の育成とぶつかることがあります。

辞退防止と入社後の基準づくりは、内定期間の設計次第で衝突もすれば両立もします。

辞退防止を主目的にすると内容がおもてなしに寄る

辞退を防ぐために、内定者が楽しく入社を前向きに感じられる内容にしたいという声は、人事担当者からよく聞かれます。

実際に選ばれやすい施策も、懇親会の回数を増やす、食事会やレクリエーションを充実させるといったものです。これらは、内定者に選ばれ続けるための接待、つまりおもてなしです。

採用市場で会社が内定者から選ばれる側に回る以上、おもてなしに傾くこと自体は自然な流れです。

問題は、おもてなしだけで内定期間を終えると、会社と新人の力関係が逆転したまま入社日を迎えることにあります。

内定者が懇親会を楽しんだかどうかと、入社後に指摘を受け止められるかどうかは、まったく別の問いです。

おもてなしが入社後のお客様気分につながる構造

入社後も新人のお客様気分が抜けない原因は、本人の性格より、内定期間につくられた構造にあると考えています。構造は、次の3つの条件に分けられます。

お客様気分を生む3つの条件

  • 力関係の逆転:
    辞退を恐れる会社が気を遣い、内定者が選ぶ側に立ったまま入社する。
  • 比較対象の不在:
    先輩との実力差や同期の水準を知らず、自分の現在地が分からない。
  • 指摘の先送り:
    期限や約束を守れなくても誰からも何も言われず、指摘される経験がないまま4月を迎える。

3つがそろった状態で入社すると、配属先の上司が初めて基準を示したときに、新人は話が違うと受け取ります。

上司の側も、辞められては困ると考えて指摘を控え、受け身の状態が長引きます。

新人の受け身を上司の教え方だけで解決しようとしても限界があるのは、原因が入社前から始まっているからです。

基準を示しても辞退を増やさない進め方

基準を示すことと、辞退の心配に向き合うことは両立できます。押さえたいのは、示し方の順番と範囲です。

  • 事前に開示する:
    何を求めるかを参加前に文書で示し、本人が判断できる状態にしてから始める。
  • 行動だけを指摘する:
    期限、提出、修正といった観測できる行動に絞り、人格や意欲を責めない。
  • 学業と健康に配慮する:
    試験や卒業研究の時期は期限を調整し、欠席時の代わりの方法を決めておく。

基準を知ったうえで入社を決めた内定者は、自分で選んだという納得感を持って4月を迎えます。

基準を示した結果として入社を見直す内定者がいても、本人の判断として受け止める立場を経営と人事で共有しておきます。

社内から伝えると、ハラスメントと受け取られないか、辞退につながらないかが気になる基準も、第三者からなら下げずに伝えられます。

以下の資料では、内定期間に基準を示し、未達を見過ごさずに扱う内定者プログラムの設計例を紹介しています。


内定者向け「畏敬」構築プログラム|入社後も「お客様気分」が抜けない理由

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内定者研修は必要か

内定者研修は法律で義務づけられたものではなく、実施しない会社もあります。

必要かどうかは、入社後の新人にどんな課題が出ているかで判断するのが、事業合理上もっとも筋のよい考え方です。

実施すると決めた場合は、参加の扱いと給与の考え方も先に押さえておく必要があります。

内定者研修を実施したほうがよい会社

厚生労働省が2026年10月に公表した新規学卒就職者の離職状況によると、2023年3月に大学を卒業した就職者の就職後3年以内の離職率は31.2%でした。

前年より2.6ポイント下がったものの、新規高卒就職者の36.9%と並んで、3人に1人近くが3年以内に最初の職場を離れている状況は続いています。

入社前の期間をどう使うかは、辞退だけでなく入社後の定着にも関わります。

次のような状況にある会社は、内定者研修を設計し直す価値が大きいと考えています。

  • 入社後の新人が指示待ちになりやすく、上司が指摘を遠慮している
  • 人事は辞退防止を、現場は早期の戦力化を見ていて、入社前後の期待がそろっていない
  • 懇親会や面談はあるが、未達への指摘や先輩との実力差を体感する機会がない

逆に、内定者が少なく、入社前から現場の社員と日常的に接点がある会社では、研修という形にこだわらず、上司との1on1や職場見学で足りることもあります。

違法にならないための参加と給与の扱い

内定者研修は雇用契約の効力が始まる前に行うため、参加を業務命令として強制することはできません。

宣伝会議事件の判決(東京地裁平成17年1月28日)では、入社前研修に参加しなかった内定者について、学業への支障は正当な理由にあたると判断されました。

会社は信義則上、受講を免除すべき義務を負っていたとされ、会社側の主張は退けられました。

参加を事実上強制し、課題の指示で時間や場所を拘束する場合は、労働時間とみなされ賃金の支払いが必要になる可能性があります。運用面では、次の3点を事前に決めておくと安全です。

  • 参加は任意であり、不参加や未提出が内定や評価に影響しないことを案内に明記する
  • 学業や試験の時期を避けた日程にし、欠席時の代わりの方法を用意する
  • 交通費や手当の扱いを決め、判断に迷う設計は社会保険労務士に確認する

任意参加と基準の提示は矛盾せず、参加を本人が決めたうえで、参加者には基準を守ることを求めます。

外部に頼むか自社でやるかの判断

内定者研修を外部に頼むか自社でやるかは、費用や手間だけでなく、誰が言えば内定者に届くかで切り分けると判断しやすくなります。

全部を外部に任せる必要も、全部を自社で抱える必要もなく、役割ごとに担い手を決めるのが現実的です。

自社で担ったほうがよい部分

創業者や経営者の言葉、事業で下してきた判断、先輩社員の仕事ぶりは、外部の講師には代われません。

内定者が会社に敬意を持つきっかけは、長い社史より、経営者がある判断を下した理由や、先輩が成果を出した具体的な場面であることが多いです。

配属予定の上司との1on1も、自社で担う部分です。入社前に一度向き合っておくと、4月に初めて会う関係より立ち上がりが早くなります。

経営者が一度も登壇しない内定者研修は、内定者から見ると人事のイベントに映ります。

外部に頼む場合でも、経営者の時間を確保できるかどうかが成否を分けます。

外部に任せたほうがよい部分

外部に任せる価値が大きいのは、社内からは言いにくいことを言う役割です。

期限や提出の基準を示し、守れなかったときに見過ごさずに指摘する役割は、採用で関係をつくってきた人事や、入社後に評価する上司が担うと、どうしても遠慮が生まれます。

社外の第三者であれば評価の関係の外から基準を伝えられるため、内定者も会社への不満ではなく、自分の課題として受け止めやすくなります。

ビジネスマナーや文書作成のような標準的な内容は、eラーニングや公開講座を使えば社内の工数を抑えられます。

関係と敬意は自社が、基準の提示と執行は外部が担うという分担が、1つの型になります。

外部に依頼するときの確認点

外部の内定者研修を比べるときは、プログラムの内容より先に、次の4点を確かめると選び間違いが減ります。

  1. 目的が辞退防止だけになっておらず、入社後に求める行動まで言葉になっているか
  2. 経営者の登壇、上司の1on1、提出状況の共有を、会社と外部のどちらが担うかが明確か
  3. 辞退率や離職率の改善を保証するような約束に頼っておらず、約束する範囲が現実的か
  4. 入社後の新卒研修や、配属後の育成に接続できるか

内定式が終わったこの時期は、入社までのフォロー計画を固めるタイミングです。

マネディクの内定者向け「畏敬」構築プログラムは、内定式後から入社直前までを、開始の儀式、課題と点呼の反復、通過の儀式でつなぐ個社プログラムです。

守らなければ必ず指摘される基準と、追いつきたい創業者や先輩の存在の両方を、入社前につくることを狙いにしています。

進め方と会社側の役割は、内定者向け「畏敬」構築プログラムの資料で確認できます。

内定者研修に関するよくある質問

内定者研修は何回くらい行うのが一般的ですか?

決まった回数はなく、1回で終える会社もあれば、内定式から入社まで数回に分ける会社もあります。

回数より先に入社直前の到達点を決め、そこから逆算して回数を決めるほうが合理的です。

内定者研修の期間はどのくらいが目安ですか?

内定式から入社までの間で、会社ごとに設計します。期間を長くとるほど基準を示して修正を求める機会を繰り返せますが、学業の繁忙期と重ならない配慮が欠かせません。

内定者に課題を出すのは違法ですか?

課題を出すこと自体が直ちに違法になるわけではありません。

ただし提出を事実上強制し、量や期限で時間を拘束すると労働時間とみなされる可能性があるため、任意であることと負担の目安を事前に示しておきます。

内定者研修はオンラインでも効果がありますか?

知識のインプットや提出状況の確認は、オンラインでも十分に機能します。

開始と締めくくりの場面や経営者の話は対面のほうが伝わりやすいため、組み合わせて設計すると効果を出しやすくなります。

eラーニングだけで内定者研修は足りますか?

ビジネスマナーなどの知識は身につきますが、視聴しなくても誰からも指摘されないため、基準を守る経験にはなりにくい面があります。提出期限や確認の仕組みと組み合わせると効果が出ます。

内定者研修と内定者インターンはどう使い分けますか?

内定者研修は基準と関係づくり、内定者インターンは実務の経験を目的にすると整理しやすくなります。実務を任せる場合の設計は内定者インターンの導入手順で解説しています。

まとめ:内定者研修は入社時点の関係を設計する期間

内定者研修の目的は、辞退防止だけではありません。入社後に求める基準を内定期間のうちに示し、同期と先輩との関係の中で自分の位置を知ってもらうところまで含めて設計すると、4月からの立ち上がりが変わります。

  • 目的は、不安を準備に変えること、基準を先に示すこと、比較できる関係をつくることの3つで定義する
  • 辞退防止を主目的にすると、力関係の逆転、比較対象の不在、指摘の先送りがそろいやすい
  • 経営者と先輩と上司が担う部分は自社で、基準の提示と未達の指摘は第三者に任せる

マネディクは、内定者研修を辞退を防ぐためのおもてなしの期間ではなく、入社時点の会社と新人の関係を設計する期間と捉えています。

自社で担う部分と第三者に任せる部分を分け、どちらも欠かさないことが、事業の成長を担う新人を育てる近道です。

ここまで見てきたように、内定者研修は辞退防止と入社後の基準づくりを両立させる設計が要になります。

以下の資料では、内定式後から入社直前までの進め方と、会社と第三者の役割分担を確認できます。


内定者向け「畏敬」構築プログラム|入社後も「お客様気分」が抜けない理由

内定辞退を防ぐための懇親会や面談が、入社後の指示待ちや他責の原因になっていないか。内定期間に基準を示し、未達を見過ごさない内定者プログラムの進め方をまとめた資料です。

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川﨑 俊介
記事を書いた人
川﨑 俊介

新卒で当時6期目(60~70名規模)の株式会社ジーニーへ入社。入社後3年間でリーダー、マネ―ジャー、部長とマネジメント経験を積み、入社後4年目で事業責任者兼執行役員に就任。組織も300名を超え、グロース上場を経験。 その後海外事業など含む複数事業の責任者、常務執行役員を経て、2022年に取締役に就任。経営企画や人事などコーポレート領域も管掌。組織規模としても1000名を突破。 2024年4月に独立し、個人で人事・経営コンサル業も成長企業に対して実施しつつ、同年12月にマネディク株式会社CEO/アクシス株式会社取締役COOにも就任。

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