【2026年版】リーダーシップ開発の実践手順と成功事例・失敗対策
変化の激しい時代において、組織を牽引できるリーダーの育成は企業の存続を左右する重要課題です。しかし、多くの企業が「リーダーシップ開発」の進め方に悩み、効果的な施策を打てていないのが実情です。本記事では、リーダーシップ開発の基礎知識から、若手・中堅・管理職それぞれに必要な階層別アプローチ、さらに現場で直面する実践的な課題と失敗パターンまで、実務に直結する情報を体系的に解説します。
リーダーシップ開発とは?基礎から理解する
リーダーシップ開発について正しく理解するには、その定義を明確にし、マネジメントとの違いを認識することが重要です。ここでは、リーダーシップ開発の基本的な概念と、大企業における位置づけを解説します。
リーダーシップ開発の定義と目的
リーダーシップ開発とは、従業員のリーダーシップスキルを向上させるための取り組みを指し、その目的は、組織内の特定の個人が、より有能なリーダーになり、チームや組織の目標達成に貢献できるようにすることです。
具体的には、組織内のリーダー、または次期リーダーとなるべき人々の能力を強化し、組織全体の効率と生産性を向上させるプロセスを指します。単なる知識の習得にとどまらず、実践的なスキルの向上と行動変容を促すことが鍵となります。
リーダーシップ開発は、研修プログラムだけでなく、現場での経験学習、コーチング、メンタリング、実践的なプロジェクトへのアサインなど、多様な手法を組み合わせて実施されます。組織の戦略目標と連動させることで、個人の成長と組織の成果を同時に達成できるのです。
マネジメントスキル開発との違い
リーダーシップとマネジメントは、しばしば混同されますが、その役割と目的は明確に異なります。
リーダーシップは、組織全体を動かし、変革を促すことを目指します。ビジョンを示し、メンバーを鼓舞し、新しい方向性を切り開くのがリーダーの役割です。一方、マネジメントは、チームを管理し、効率化を図ることに焦点を当てます。計画を立て、リソースを配分し、進捗を管理するのがマネージャーの役割です。
大企業では、両方のスキルが求められますが、特に変化の激しい時代においては、リーダーシップの重要性がより高まっています。マネジメントスキルだけでは、組織を新しい方向に導くことは困難です。
大企業におけるリーダーシップ開発の重要性
大企業がリーダーシップ開発に力を入れるべき理由は、主に3つの背景にあります。
- VUCA時代への対応:先が読めない激しい時代の変化に対応するため、指示を待つのではなく、自分から思考して自律的かつ積極的に行動できるリーダーシップ人材が必要です。
- 人材不足への対策:人材不足が深刻化する中で、優秀な人材を惹きつけ、育成し、定着させる仕組みづくりが不可欠であり、リーダーシップ開発はそのような人材マネジメントの重要施策となっています。
- Z世代の価値観への対応:Z世代以降の若手社員の仕事に対する価値観や期待が従来の世代と異なることに対応するため、早期からのリーダーシップ育成が必要です。
リーダーシップ開発プログラムがある場合、ハイポテンシャルリーダーは組織に残る可能性が2.4倍高くなるという調査結果もあります。リーダーシップ開発は、人材の定着とエンゲージメント向上にも直結する重要な施策なのです。
2026年、リーダーシップ開発が注目される3つの背景
リーダーシップ開発が今、特に注目される理由は何でしょうか。2026年における最新のトレンドと合わせて、3つの重要な背景を解説します。
VUCA時代における組織変革の必要性
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、現代のビジネス環境の特徴を表しています。
このような環境下では、トップダウンの指示を待つだけでは対応が遅れます。各階層のリーダーが自律的に判断し、柔軟に対応する力が求められます。変化の兆しを素早く捉え、組織を適応させるリーダーシップが、企業の競争力を左右するのです。
VUCA時代に求められるリーダーシップは、不確実な状況下でも方向性を示し、メンバーを安心させながら前進させる力です。完璧な答えがない中でも、仮説を立てて実行し、学びながら軌道修正する能力が重要となります。
AI時代への対応と準備度合の分断
AI時代の到来は、リーダーシップのあり方を根本から変えつつあります。Global Leadership Forecast 2023調査によると、初級・中級管理職は、経営層に比べて3倍もAIへの懸念を示しており、「準備度合による分断」が生じています。
AIは膨大なデータを瞬時に分析し、パターンを抽出できますが、文脈・倫理・共感を提供できるのは人間のリーダーだけで、AIには代替不可能です。
AIと人間の役割分担
- AIが得意:データ分析、パターン認識、予測、反復作業の自動化
- 人間が得意:文脈理解、倫理的判断、共感、創造的思考、複雑な意思決定
リーダーシップ開発においては、AIリテラシーを育成するとともに、人間にしかできない要素を強化することが重要です。AIとの共存を前提とした新しいリーダーシップ像を描く必要があります。
Z世代の意識変化と次世代リーダー育成の期間短縮
Z世代以降の若手社員は、従来の世代とは異なる価値観を持っています。仕事に対する意味づけや、ワークライフバランスへの関心が高く、従来型のトップダウン型リーダーシップに違和感を覚える傾向があります。
同時に、次世代リーダー育成の期間が短縮している背景もあります。以前は管理職になってからリーダーシップを学ぶことが一般的でしたが、現在は若手のうちから早期育成を行う企業が増えています。
早い段階からロールモデルを意識させることで、キャリアの方向性が明確になり、離職率の低下やエンゲージメントの向上につながります。若手社員が「この組織で何を目指すべきか」を理解できることは、人材定着の重要な要素なのです。
リーダーシップ開発の具体的な進め方(6ステップ)
リーダーシップ開発を効果的に進めるには、体系的なアプローチが必要です。ここでは、実務で使える6ステップの進め方を解説します。
ステップ1〜3(準備フェーズ)
- 目的と目標の明確化
まず、リーダーシップ開発の目的を明確にします。「次世代経営者の育成」「現場リーダーの強化」「組織文化の変革」など、自社の戦略に合わせた目的を設定し、具体的な目標(例:3年以内に管理職候補者を50人育成)を定めます。 - 現状分析とニーズの特定
現在のリーダーシップの状況を客観的に評価します。360度評価やエンゲージメント調査などを活用し、どのようなリーダーシップスキルが不足しているか、組織のどの階層に課題があるかを特定します。 - プログラムの設計
目的とニーズに基づいて、具体的なプログラムを設計します。研修、コーチング、アクションラーニング、ジョブローテーションなど、多様な手法を組み合わせることが効果的です。後述する「70対20対10の法則」を参考に設計しましょう。
準備フェーズでは、経営層と人事部門、現場のマネージャーが連携し、組織全体で取り組む体制を整えることが重要です。特に、現場のマネージャーがリーダーシップ開発の重要性を理解し、協力する意識を持つことが成功の鍵となります。
ステップ4〜6(実行フェーズ)
- 予算とリソースの確保
リーダーシップ開発には、研修費用、外部コーチやファシリテーターの費用、社内の時間リソースなどが必要です。ROI(投資対効果)を経営層に示し、必要な予算とリソースを確保します。 - 参加者の選定
プログラムの対象者を選定します。ハイポテンシャル人材だけでなく、幅広い層を対象にすることで、組織全体のリーダーシップ底上げが可能になります。選定基準を透明化し、公平性を保つことも重要です。 - プログラムの実施
設計したプログラムを実行します。定期的にフィードバックを収集し、プログラムの効果を測定しながら、必要に応じて内容を改善していきます。参加者の行動変容を観察し、現場での実践をサポートします。
実行フェーズでは、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善することが重要です。一度きりの研修で終わらせず、長期的な視点で人材を育成する姿勢が求められます。
70対20対10の法則を活用した学習設計
リーダーシップ開発プログラムで最もポピュラーな考え方が「70対20対10の法則」です。
70対20対10の法則とは
- 70%:業務体験(現場での経験学習)
実際の業務の中でリーダーシップを発揮する経験が最も重要です。チャレンジングなプロジェクトへのアサイン、部門を超えた協働、タスクフォースへの参加などが該当します。 - 20%:他者からのフィードバック(コーチング・メンタリング)
上司や先輩、外部コーチからのフィードバックを通じて、自己認識を深め、改善点を把握します。定期的な1on1面談や360度評価が効果的です。 - 10%:研修・eラーニング
体系的な知識やフレームワークを学ぶための研修です。オンライン学習、集合研修、ワークショップなどが含まれます。
この法則から分かるように、リーダーシップは現場での実践を通じて最も成長します。研修だけに頼るのではなく、実務の中でリーダーシップを発揮する機会を意図的に作ることが、効果的な育成の鍵なのです。
リーダーシップ開発を成功させるには、理論と実践を組み合わせた体系的なアプローチが求められます。組織としてリーダーを育成する仕組みを整えることで、持続的な成長が実現できます。
マネディクは、実践的なリーダーシップ開発を支援するツールと方法論を提供しています。詳細は以下の資料でご確認いただけます。
階層別リーダーシップ開発の進め方
リーダーシップ開発において、すべての階層に同じアプローチを適用するのは効果的ではありません。若手・中堅・管理職それぞれに必要なリーダーシップ開発の内容は大きく異なります。ここでは、階層別の具体的なアプローチを解説します。
若手社員(20代)向け:「部下力」の習得が最優先
若手社員にとって最も重要なのは、部下力の習得です。部下力とは、マネージャーに依存せず、自ら最適な動きを提案し、主体的に行動する力を指します。
若手に必要な5つのマインドセット
- 質より量:量をこなしたものが、ようやく何が重要で何が重要でないかの取捨選択ができるようになります。最初から効率を求めても、ただの「仕事しない人」になってしまいます。
- スピード重視:コミットメントとは「スピード」です。取引先への返信、社内の意思決定、問題のリカバリ、全てが異常に速いことが信頼の証となります。即レスは信頼の証です。
- 素直さ:突き抜けるビジネスマンの共通点は「行動量」と「素直さ」です。くだらないプライドで指摘を拒絶せず、フィードバックを素直に吸収し、自分の非を認めて学びを得られる者だけが成長します。
- 自責思考:最強のマインドは「自責」です。上司や環境のせいにせず、「自分が何をできたか」を問いの出発点にすれば、学びと成長が始まります。
- 弱みから逃げない:ビジネスマンとして最低限克服すべき「弱み」はあります。タスク管理、構造的思考、コミュニケーション力。これらを「苦手」と言って放置すれば、強みを活かす土俵にすら立てません。
若手のリーダーシップ開発は、将来のリーダー候補としての土台を作る時期です。この時期に正しいマインドセットを身につけることが、その後のキャリアを大きく左右します。
中堅社員(30代)向け:プレイングとマネジメントのバランス
中堅社員にとっての最大の課題は、プレイングマネージャーとしてのバランスです。多くの中堅社員が、現場での実務(プレイング)に追われ、本来のマネジメント業務を疎かにしてしまいます。
「プレイングという免罪符」に注意が必要です。プレイングは、目の前のタスクをこなせば確実に「終わる」し、クライアントに貢献すればすぐに「感謝」されます。一方で「マネジメント」は、目の前のタスクをこなせば確実に「終わる」わけではなく、遅効性で、精神的な負荷が高いのです。
人の採用、評価へのフィードバック、組織文化の浸透、離職リスクへの対応、戦略の策定。これらはすぐに成果が見えず、正解もなく、時には部下から嫌われるリスクすらあります。だからこそ、「プレイングマネージャー」という言葉を盾にして、「現場が忙しいから」というもっともらしい理由(免罪符)を使い、不確実でストレスフルな「マネジメント」という本来の役割から目を背けているだけなのです。
リーダーにとっての「成功」の定義は、「自分がどれだけ頑張ったか」や「チームが良い雰囲気か」ではなく、「組織として結果が出ているか」のただ一点に尽きます。そのために必要ならば、あえて手を動かすのを止め、会議室に籠もって戦略を練る時間を作るべきです。不慣れなメンバーに任せて失敗させ、そこから学ばせるという「待つ苦痛」にも耐えなければなりません。
プロジェクトマネジメントで最も大事なのは、「コミットメント」です。きれいなタスク管理シートも適切なアジェンダの会議体も、あった方が良い武器ですが、とはいえプロジェクトが期日までに完了しないならすべて無意味です。自分がそのプロジェクトのオーナーならば、全て自分事にして解決のために万策を尽くさないといけません。
管理職(40代以上)向け:優秀な部下への対応と組織成果へのコミット
管理職にとっての重要な課題は、自分より優秀な部下が現れた際の対応です。優秀な部下の提言に、内心「鋭いな」と思いつつ、こじつけがましい理由で否定してしまう。自分のお株を奪われる恐怖から、無意識にその存在を排除しようとする。このような「ダサい」マネージャーになっていないでしょうか。
実例:2年目を副事業責任者に抜擢 → 140%成長
ある事業責任者は、2年目の若手が突如として頭角を現し、自分の方針を一部覆すような鋭い戦略提言を連発し始めた際に、周囲の疑問も気にせず、まだ2年目の彼を「副事業責任者」に抜擢しました。戦略の中核議論に巻き込み、事業の半分近い領域を委譲したのです。それは、慢心していた自分にとっての、完全な「暫定の完敗」宣言でした。ただ結果として、毎年110%成長がやっとだった事業は、なんと2年連続で140%成長という大躍進を遂げました。
自分より優秀な部下が現れたら、マネージャーはまず「暫定の完敗」を認めればいいのです。ではその際にマネージャーはどんな役割を担うべきか。どうやって存在意義や価値を証明するのか。それは、「誰よりも事業の成長に当事者意識を持つ」という覚悟です。
自身が戦略の全てを司るだけの力がなかったとしても、自分が誰よりもその事業が成長していないことに苦しみ、その解消のためにあらゆる手段を投じる覚悟を持つこと。それはトップしか持てない覚悟です。この覚悟さえあれば、優秀な部下は「自分を脅かす敵」ではなく、「事業を共に伸ばす救世主」に変わります。マネージャーの価値は、それで十分なのです。
管理職のリーダーシップ開発は、自己の役割を再定義し、組織全体の成果にコミットする覚悟を固める時期です。個人のプレイヤーとしての成果ではなく、組織としての成果を最大化することが、管理職の本質的な役割なのです。
リーダーシップ開発で直面する3つの実践的課題と解決策
リーダーシップ開発を進める際、理論だけでは解決できない実践的な課題に直面します。ここでは、現場で実際に起こる3つの課題と、その具体的な解決策を提示します。
課題1:「プレイングという免罪符」問題
前述の通り、「プレイングマネージャー」という言葉を盾にして、マネジメント業務から逃げてしまうケースが多くあります。現場の高揚感に酔い、自分主導で物事がうまく進んでいる時ほど、実は組織が脆弱になっているのです。
プレイングで忙しい状態が続くと、「誰も育っていない」「自分がいなければ回らない」という脆弱な組織になります。部下との1on1や採用面接の直前まで実務に追われ、「ごめん、クライアント対応が入って」とリスケする。「自分がやった方が速いし、確実だ」と、メンバーのタスクを巻き取る。一見、責任感が強く、頼りがいのあるリーダーに見えますが、組織が拡大して表出する実態は、誰も育っていないという現実です。
対策:マネジメント時間の確保とタスクの委譲
- 「この時間はマネジメント業務以外やらない」と決めて時間をブロックする
- 会議の時間内で意思決定とタスクの割り振りを完結させ、持ち帰らない
- 全メンバー平等ではなく、事業インパクトの大きいキーマンに時間を集中投下する
- 不慣れなメンバーに任せて失敗させ、そこから学ばせるという「待つ苦痛」に耐える
限られたリソースの中で組織成果を最大化するためのマネジメントの工夫は、探せばいくらでもあります。現場の高揚感に酔わず、マネジメントの重圧や責任と向き合うことが重要です。
課題2:「抱え込み」がボトルネックになる問題
「自分でなんとかします」といって抱え込むのは、一見すると責任感が強いように見えますが、実はその逆であるケースが極めて多いのです。特にスピードと成果が全てであるベンチャーの現場において、この「抱え込み」は組織にとっての最大のリスク要因になりえます。
目的は「課題を解決すること」であって、「自分が解決すること」ではありません。
ビジネスにおけるゴールはあくまでも「成果を出すこと」や「課題を解決すること」に尽きます。そのための手段として自分の能力だけで足りなければ、上司だろうが他部署だろうが外部の有識者だろうが、なりふり構わず使い倒せばいいのです。「自分だけで解決すること」を目的にしてはいけません。
「できない自分」を認めるのは怖いものです。プライドが傷つきます。ただそのちっぽけなプライドを守るために事業やクライアントへの成果を犠牲にするのか、それともプライドをかなぐり捨ててでも成果に執着するのか。後者を選べる人だけが、結果として大きな成長を手にします。
自身では答えきれない会社の上流の問いかけがメンバーから来た際に、堂々と「それは戦略的な話で、自分も解像度が低い部分があるので、部長に一緒に聞きに行こう」と話して、少し時間を作ってもらっても良いでしょう。キャリア支援だって、誰か似たような課題を抱えていたり、メンバーに明確な希望があれば、その部署の人に時間をもらって「今現状のポジションで何に取り組むべきか」などをヒアリングする時間を設けてあげても良いのです。
あくまでも「部下の課題を解決してあげること」を目的化すべきであり、「自分で解決すること」を目的化すべきではありません。課題解決のためにいろんな人に頼ってでもソリューションを提示してあげると、その誠意に対して部下も絶対に信頼を示します。
課題3:研修のROIが測れず、投資判断できない問題
よくマネジメント研修などの組織改善ワークショップの話をしていると、「ROIが分からないから導入判断しづらい」という声を聞きます。もちろん売上などの業績指標と直接紐付けるのは難しいので、言っていることは理解できます。
しかし、研修などのROIを測るには、「業績に影響を与える行動パターン(組織がどんなアクションをしていれば、業績成長につながるのか)」を明確に定義し、その行動をする人員をどれだけ社内に増やせるか、という形で評価する必要があります。研修 → 望ましい行動の喚起 → 業績成長という流れで、望ましい行動を測ることが間接的に業績への影響度を測れることになり、それがROIになります。
ROI算出の3ステップ
- 業績が伸びる望ましい行動を定義する
会社をこれまで伸ばしてきた経営者の行動パターンやスタンスを洗い出します。例えば「基本的に他責にせずに最後までGAPをチームと追いかける姿勢がある」「スピードを意識し即レス、自身がボトルネックにならない」「キーマンの育成には頻繁に飲みに行って関係性も深めつつ厳しいFBや書籍も紹介する」など、「自分はこうやって会社と組織を伸ばしてきて、なのでこの業績があるんだ」というものがあるはずです。 - その行動を増やすための施策を設計する
それらの行動を、例えばより多くのマネジメントが、より多くの社員がしてくれたらどうか。業績はまず間違いなく伸びます。逆に言えば、それらの業績が伸びる上で必要な望ましい行動を、各マネジメントや社員がとっていないというところに、いわゆる「組織課題」があります。 - インパクトを金額ベースで試算する
例えばあるチームが思ったように成果が出ておらず、マネジメントが望ましい行動を取れていないとします。仮にそのチームを経営者自身がマネジメントしたら、どのくらい業績が伸ばせるか、という考え方をすれば良いのです。これが、「組織課題のインパクト・影響金額」となります。
研修のROIはサービス業者側に委ねるものではなく、会社側が主体的に考えていくものです。最も重要な資産である組織のROIを外部に完全に委ねてしまうのは危険です。
リーダーシップ開発でよくある5つの失敗パターンと対策
リーダーシップ開発で成功するためには、よくある失敗パターンを事前に知り、回避することが重要です。ここでは、現場で頻繁に見られる5つの失敗パターンと、その対策を解説します。
失敗パターン1〜3
失敗パターンと対策
- 失敗1:「昔はこれで上手くいった」症候群
問題点:「昔はこれでうまくいった」以上の理由が出てこず、周囲の社員も「昔上手くいったならそれでやるしかない」と無理やり受け止めざるを得ません。論理的になぜそれが上手くいったのか、なぜそれが(得てして環境や様々な変数が変化していてもおかしくないのに)現在でも有効なのか、それらをしっかりと整理して説明しないと論理的な腹落ちができず、施策を進めることになります。
対策:過去の成功体験を「なぜ上手くいったのか」を論理的に分解し、現在の環境で有効かを検証します。環境や変数の変化を考慮し、新しいアプローチを模索することが重要です。 - 失敗2:ロールモデル依存のリスク
問題点:社内にロールモデルを作ることは一見良いことですが、変動リスク(そのロールモデルがすぐに辞めてしまう、評価が下がる)や選定難易度(ゴリゴリのプレイヤーで人格面で極端、マネジメントに不向き、組織を批判する人がロールモデルになってしまう)の問題があります。
対策:「人」ベースのエンゲージメントは極力回避し、客観的な「会社にとって望ましい人物像」を定義します。具体的な行動指針ベースに落とし込み、繰り返しその個人の成功体験や成果事例と紐づけ続けることで、「こういう行動をし続けることで成果が出るんだ」という方程式を刷り込んでいきます(カルチャー浸透)。 - 失敗3:マイクロマネジメントと放任のバランスミス
問題点:マイクロマネジメントしすぎると部下の自律性が失われ、放任しすぎると方向性を見失います。特に若手マネージャーがこのバランスを見誤り、極端に偏ることがあります。
対策:部下の習熟度に応じて、マネジメントのスタイルを変えます。初期段階では細かく指導し、徐々に権限を委譲していくアプローチが効果的です。定期的な1on1で進捗を確認しつつ、部下の成長に合わせてマネジメントの濃淡を調整します。
これらの失敗パターンは、どれも組織に深刻なダメージを与えます。特に、論理破綻や情報格差は、中途社員や社歴の浅い社員からすると無力感や疎外感を覚えてしまう要因となります。
失敗パターン4〜5と総合的な対策
失敗4:朝令暮改への不満をコントロールできない
ベンチャーでは朝令暮改は当然ですが、方針が先週と今週でガラリと変わることに対して、メンバーの不満が爆発することがあります。「なぜこの軌道修正をするのか」を事細かに説明する義務があります。最初の仮説はこういうものだった、ただ実行してみた結果こういう学びが得られた、それを踏まえるとこちらの方向に行った方が良いと考える、そのうえでこういう方向に行きたいと思う、なのでついてきてほしい、というコミュニケーションが必要です。
失敗5は「強みを活かす」の誤解です。MBTIに代表されるように、自身の特性や強みを理解したいという欲求は広く根深く存在しますが、ベンチャー企業においてそれを誇大解釈されてしまうと、組織は確実に弱くなります。ビジネスマンとして「これが苦手」と言ってはいられない最低限のスキルはあります。クリティカルシンキングや物事を構造的に捉える力、タスク管理やプロマネ、コミュニケーション力、数値を読み解く力、資料やドキュメント作成など。これらを「弱み」として放置してしまうと、そもそもまともなアサインメントができず、「強み」を活かす環境にすら身を置きづらいのです。
総合的な対策として、「他者の失敗から学ぶ」ことが重要です。「勝利の仕方は無限だが、敗北の仕方は共通」とはよく言われます。勝利や成功は結構運だったりマクロ環境によっても左右されますが、敗北や失敗には共通点があります。「他人の失敗から学べよ。自分自身の失敗だけで全てを学ぶには、人生は短すぎる」という言葉があるように、失敗例を収集し、そこの回避策を練る方が再現性は高くなります。
よく「内省」というが、自分自身の経験や認知から得られる学びだけでなく、「外省」も積極的に取り入れていくと、より早くゴールにたどり着けます。
リーダーシップ開発には、体系的な取り組みが不可欠です。個人の努力だけでなく、組織全体でリーダーシップ育成の仕組みを整えることで、持続的な成長が可能になります。
マネディクでは、リーダーシップ開発を支援するための実践的なツールと知見を提供しています。詳しくは、以下の資料をご覧ください。
リーダーシップ開発の成功事例と効果測定
リーダーシップ開発の効果を実感するには、他社の成功事例を知り、効果測定の方法を理解することが重要です。ここでは、日本企業の具体的な成功事例と、効果測定の具体的な方法を解説します。
日本企業の成功事例3選
サーバントリーダーシップの成功事例
- 資生堂:経営改革においてサーバントリーダーシップの理念を取り入れ、これによって業績向上や組織の変革を達成しています。
- ダイエー:トップダウン経営で成長を続けてきたが、業績不振の際にサーバントリーダーシップの導入を図りました。樋口氏が全ミーティングに参加し、従業員の意見を積極的に取り入れるなどの取り組みを行い、結果として顧客からの信頼を回復することに成功しました。
次世代リーダー育成の成功事例
- サントリー:グループ全体を先導するリーダーに向けて「リーダーシップ・コンピテンシー」を策定し、グループ各社の人材情報を共有する「グループタレントレビュー会議」を開催することで経営人材の発掘に取り組んでいます。
- 商船三井:イノベーティブな思考法やリーダーシップなどのフレームワークを学んだ後、小グループで「10年後の商船三井を創造する」というテーマに沿ってアクションラーニングを行い、最終日には経営陣に対し提言をプレゼンテーションするという内容の経営塾プログラムを実施しています。
シェアドリーダーシップの成功事例
- キヤノングループ:営業部門や製造部門でシェアドリーダーシップを積極的に導入しており、営業部門では10名のメンバーがそれぞれ営業やITソリューションなどの専門スキルを持ち、顧客のニーズに応じてリーダーシップを発揮しています。
- JR東日本テクノハートTESSEI:新幹線の清掃業務を「おもてなしのサービス業」と再定義し、現場のスタッフに権限を委譲することで、従業員一人ひとりが「おもてなし」の精神で仕事に取り組み、顧客満足度を向上させることに成功しました。
これらの事例に共通するのは、リーダーシップのスタイルを組織の状況や文化に合わせて選択し、長期的な視点で人材育成に取り組んでいる点です。
効果測定の具体的な方法とROI算出
リーダーシップ開発の効果を測定するには、定量的な指標と定性的な評価を組み合わせることが重要です。
効果測定の主な指標
- 離職率:リーダーシップ開発プログラムがある場合、ハイポテンシャルリーダーは組織に残る可能性が2.4倍高くなるという調査結果があります。離職率の変化は、プログラムの効果を示す重要な指標です。
- 昇進率:プログラム参加者の昇進率を測定します。リーダーシップ開発が効果的であれば、参加者の昇進率が非参加者よりも高くなるはずです。
- エンゲージメントスコア:従業員エンゲージメント調査を定期的に実施し、スコアの変化を追跡します。リーダーシップが向上すれば、チーム全体のエンゲージメントも向上します。
- 360度評価:プログラム前後で360度評価を実施し、リーダーシップ行動の変化を測定します。上司、同僚、部下からの評価を総合的に判断します。
- 業績指標:チームや部門の業績(売上、生産性、顧客満足度など)を追跡し、リーダーシップ開発との相関を分析します。
ROI算出については、前述の「研修のROI」セクションで詳しく解説した通り、「業績が伸びる望ましい行動」を定義し、その行動をする人員を増やすことで業績への影響を測定します。組織課題のインパクトを金額ベースで試算することで、具体的なROIを算出できます。
まとめ:リーダーシップ開発を成功させるために
本記事では、リーダーシップ開発の基礎知識から、階層別の具体的なアプローチ、実践的な課題と解決策、よくある失敗パターンと対策まで、包括的に解説してきました。
リーダーシップ開発を成功させるための重要なポイントは以下の通りです。まず、階層別アプローチを採用し、若手・中堅・管理職それぞれに必要な施策を明確にすることです。若手には部下力、中堅にはプレイングとマネジメントのバランス、管理職には組織成果へのコミットメントが求められます。
次に、実践的課題に対応することです。プレイングという免罪符、抱え込み、研修のROI測定など、現場で直面する具体的な問題に向き合い、解決策を実行する必要があります。
そして、失敗回避を意識することです。「昔はこれで上手くいった」症候群、ロールモデル依存のリスク、朝令暮改への不満など、よくある失敗パターンを事前に知り、対策を講じることで、効果的なリーダーシップ開発が実現できます。
このような企業におすすめ
- 複数の階層(若手・中堅・管理職)にまたがるリーダーシップ育成が必要な大規模組織
- プレイングマネージャーが多く、マネジメント業務が疎かになりがちな企業
- 次世代リーダーの育成に課題を感じている企業
- リーダーシップ開発のROIを明確にしたい企業
- VUCA時代やAI時代に対応できるリーダーを育成したい企業
リーダーシップ開発は、一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、本記事で解説した階層別アプローチ、実践的な課題への対応、失敗回避の方法を実践することで、確実に組織のリーダーシップ力を高めることができます。まずは現状のリーダーシップ課題を可視化し、優先順位をつけて取り組んでいきましょう。若手向けの部下力育成から始めるのも、中堅のプレイング・マネジメントバランスを見直すのも、どちらも有効なスタートポイントです。組織の状況に合わせて、最適なアプローチを選択してください。
※参考:Schoo「リーダーシップ開発とは?その手法から今求められるZ世代以降のリーダーシップについても解説」、LDcube「リーダーシップ開発とは?実務で使える6ステップの実践ポイント」、Qualtrics「リーダーシップ開発プログラム 完全ガイド」、MSC「2026年の5つの重要なリーダーシップトレンド」、MSC「今、組織に必要なリーダーシップ開発の5つのメリット」、flapsplan「サーバントリーダーシップを取り入れている4つの企業事例を紹介!」、flapsplan「次世代リーダー育成の3つの企業事例を紹介!」、flapsplan「シェアドリーダーシップを導入している3つの企業事例を紹介!」
